にげにげ日記

うつ病持ちのゲイ

九州レインボープライドで参政党テーマソング歌唱!? 中立的なプライドイベントなんてあり得るのか

九州レインボープライドの公式ホームページのスクリーンショット。画面中央に「九州レインボープライド公式声明」が掲載されている。

 

2025年11月2日(土)・3日(日)、天神中央公園(福岡県福岡市)にて、「九州レインボープライド2025」が開催されました。各地で企画・実施されている、LGBTQに対する差別や偏見に反対し、権利の獲得を目的とするイベントの1つです。

 

しかし、九州レインボープライド2025のステージにて、とある出演者が参政党のテーマソングを披露するという事件が発生しました。

 

参政党は、ここ最近、党勢を拡大している政党の1つですが、排外主義を煽ったり陰謀論を展開したりとさまざまな問題が指摘されています。LGBTQに関しても、代表の神谷宗幣が「LGBTなんかいらない」と発言したり、LGBT理解増進法について「価値観の押し付けに対する懸念や性犯罪の増加に対する不安、スポーツ界におけるジェンダー問題など諸外国が直面してきた社会的混乱が日本でも生じるのではないかという社会的不安が広がっている」*1などとして反対しています。「反LGBT」を明確に掲げている政党だと言えます。

 

kurodoraneko15.theletter.jp

 

九州レインボープライドの声明

そんな政党のテーマソングが、プライドイベントのステージで披露されたということで批判の声が上げられていたのですが、これに対して九州レインボープライド側から公式声明が発せられました。*2

 

長くなりますが、以下に引用します。

 

 2025年11月1日(土)に開催された九州レインボープライドのステージにおいて、ある出演者によって特定の政党の名前を明示した上でその政党のテーマソングが披露されました。


(中略)

 

 出演者から申し込みを受け出演が決定したもので、実行委員会は出演者から事前に曲名が記載されたセットリストの提出を受けていました。しかしながら実行委員会では全ての楽曲の制作背景までは確認を行っておらず、その曲が特定の政党に関連するものであることを把握できておりませんでした。また、実行委員会は、セットリストのほかに出演者から出演依頼を受けた際に、出演者自身で作成したプロフィールの内容確認を行っておりましたが、それ以上の詳細な調査は行っておりませんでした。
 その結果、九州レインボープライドが当該政党を支持するかのように受け取られかねない状況が発生し、また、判断の遅れによりこれを止めることができませんでした。

 

 九州レインボープライドは、LGBTQ+を含むすべての人々の尊厳と多様性を祝福し、誰もが安心して参加できる場をつくることを目的としています。その理念のもと、当団体は特定の政党や特定の宗教団体を支持・推奨することは一切ありません。今回の出来事は、そうした基本姿勢とは相反する出来事です。私たちはこの事態を重く受け止め、深く反省しております。

 

ここまでは事実関係の確認です。が、参政党の名前をボカして書いているあたりに、すでに問題の本質を捉え損ねているように思えます。さらに、続く文章に驚きました。

 

 実行委員会において、協議を重ねた結果、再発防止のため、以下の対応を速やかに進めます。
具体的には、来年度以降におけるステージおよびブースに関する事前確認体制と当日の体制を見直し、同じ過ちが起きないように体制の強化をいたします。

 

・出演者や関係者に対し、中立性に関するガイドラインの共有・同意を徹底いたします。
・出演者や関係者に対し、九州レインボープライドの理念の理解を求め、表明保証を取得します。
・上記に反するステージやブースに関しては直ちに適正な対応を取らせていただきます。


 今回の件により、当啓発イベントにご来場いただいた方々、そして当啓発イベントに関わる多くの方々、そして長年私たちを信頼し支えてくださっている皆さまに不信感や失望を与えてしまったことを、改めて深くお詫び申し上げます。九州レインボープライドは、今後も透明性と説明責任をもって運営し、社会の信頼を取り戻すために全力を尽くしてまいります。
 今回の件につきましては、皆さまから様々なご意見をいただいておりますが、本声明をもって、皆さまに対する回答に変えさせていただけますと幸いです。
 皆さまには、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

今回の事件の反省として、「出演者や関係者に対し、中立性に関するガイドラインの共有・同意を徹底」するそうです。また、「九州レインボープライドの理念の理解を求め、表明保証(何それ?!)を取得します」だそうです。

 

しかし、今回批判されているのは、中立性の欠如なんかではなく、「反LGBT」を明確に掲げている政党のテーマソングが披露されたことです。イベントのコンセプト(「LGBTQ+を含むすべての人々の尊厳と多様性を祝福し、誰もが安心して参加できる場をつくる」)に真っ向から反対するような政党のテーマソングが披露されてしまったこと、それが見過ごされてしまったことが問題の本質なはずです。ここから目を逸らした「反省」で終わってしまうようでは、来年以降のイベント運営も期待できません。

 

中立性なプライドイベントなんてあり得るの?

また、ここでいう「中立性」とは何でしょうか。中立性を目指すプライドイベントとは何なのでしょうか。「反LGBT」を掲げる政治家や政党も複数あるなかで、中立性を徹底しようとすれば、同性婚の成立(婚姻の平等)トランスジェンダーの権利保障、差別禁止法の制定などを求める声さえも「中立的でない」として禁止されることが危惧されます。そもそもクィアたちが集まる、街中に集団として現れるだけでも十二分に政治的な意味やパワーを持つはずです。そのような場でいかにして中立性を徹底するつもりなのか、まったく理解できません。

 

九州レインボープライドは、2018年から2019年にかけて、「反社会的・政治的なプラカードは禁止」とホームページに掲載し、批判を受けたことがありました。その際に、「具体的にどんな文言が禁止なのか?」と問い合わせた方々がいたのですが(詳しくは、九州の仲間たちと作っているZINE『四面楚歌系クィアメディア MagazineF』Vol.2に書いてあります)、返信文には、「『原発反対』とか、労働問題とか、(中略)反韓・反中運動などの政治批判や政治家おろしのような文言」と書かれていたそうです。

 

ヘイトスピーチと労働問題などが同列に並べられていることから、政治に対する解像度の低さが露呈していることも問題ですが、2018年は『新潮45』という雑誌に杉田水脈衆議院議員が「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論文を寄稿し、大きな批判を招いたタイミングでもあります。そのタイミングで行われるプライドイベントで、「政治批判や政治家おろしのような文言」を禁止するということが、どういう意味を持つのだろうかと考えざるを得ません。

 

chikuwashobo.booth.pm

 

九州レインボープライドだけの問題か?

以上のことを踏まえると、九州レインボープライドは問題の本質を捉え損ねているだけでなく、プライドイベントの脱政治化、あるいは商業主義やピンクウォッシュへの加担という、これまで各国さまざまなプライドイベントで繰り返し批判されてきた問題をもう一度なぞってしまうだけのように思えてなりません。

 

だとすれば、これは九州レインボープライドだけの問題ではありません。東京レインボープライド(現・東京プライド)では、パレスチナで虐殺を行なってきたイスラエル大使館のブースが出展されていましたし、神戸レインボーフェスタ2025では、「虐殺反対」と書いたプラカードを持つ参加者をスタッフが排除するということがありました。”政治的”なものに対する忌避感(それ自体がとっても政治的なのですが)や、”中立的”であることを是とする態度(それ自体がぜんぜん中立的でないのですが)が、このようなかたちで表れているのではないかと思います。

 

www.huffingtonpost.jp

 

元来、プライドイベントはれっきとした政治的な運動であり、LGBTQの権利獲得運動の1つです。参政党のような政党が支持を集め、より保守的な政権が誕生してしまっているこの政治・社会状況で、はたしてクィアが権利を獲得するのに中立的でいられるのでしょうか。何のための中立性なんでしょうか。

 

そのことについて改めて考え、共有していく必要があると感じています。

*1:LGBT理解増進法案に関する見解 | 参政党(https://sanseito.jp/2020/news/7505/

*2:九州レインボープライド公式Xアカウントの投稿(https://x.com/QRP4lgbt/status/1985923747443065204