にげにげ日記

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(元)不登校ゲイの思索

東京レインボープライドはスポンサーが大好き——レインボープライドと協賛のあり方について

表題についてTwitterにいくつか投稿したのですが、あとで見返すにはブログのほうが何かと便利だし、そもそもTwitterがいつ無くなるか分からないので、こちらにまとめておくことにしました。

 

 

スポンサーをまともに審査してこなかった?

今年の東京レインボープライド(以下、TRP)では、特別協賛プランのうち、レインボー、ダイヤモンド、プラチナの企業には審査が入るらしいです。

 

tokyorainbowpride.com

 

TRP2023の「ご協賛のご案内」に掲載されている、特別協賛プランの付帯特典一覧ページ。左下に「レインボー、ダイヤモンド、プラチナのご協賛には審査が入ります。」と注釈がある。

 

去年まではこの注釈はなかったので、おそらく去年のTRPで起きた事件を受けて追加されたものなのかなと推測しています。どんな審査が行われるのか問い合わせてみましたが、一般公開はしていないそうです。

 

推測ですが、審査基準が低いと「こんな基準で大丈夫?」と批判されるだろうし、逆に審査基準が高いとスポンサー様が寄り付かなくなっちゃうだろうと考えると、一般公開はせずに、企業に応じて柔軟に対応するのが賢い、ということではないでしょうか。一参加者としては、公開してもらったほうが安心して参加できるんですけれど。

 

ちなみに、「ゴールド、シルバー、ブロンズの企業には審査はしないのか」と問い合わせてみたところ、TRPの趣旨に賛同してもらえるかどうかのすり合わせはしている、ということで、要するに審査はしていないそうです。お金さえ払えば協賛企業になれてしまうという状況は、ちょっと怖い……。

 

平和的な抗議活動をしていたゲイ男性が通報される事件

先述した「去年のTRPで起きた事件」とは、2022年のTRPの会場で「アクサ」のブース前で平和的な抗議活動を行ったゲイ男性が、TRPスタッフによって警察に通報されてしまったという恐ろしい事件のことです。

 

www.huffingtonpost.jp

 

日本最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)2022』(4月22〜24日、代々木公園)の2日目となった23日、ゲイの孝則さん=仮名=が保険会社などを運営する『アクサグループ』と『TRP実行委員会』に対し、抗議活動を行う一幕があった。

孝則さんは『アクサ損害保険』で自動車保険を更新する際、同性パートナーを配偶者として認められなかったといい、同社が出展する企業ブースの前でプラカードを持って「LGBTQフレンドリーを謳い、TRPの大きなスポンサーとなっている企業が、セクシュアリティによる差別をしていることに、大きなショックを受けました」「TRP実行委員会にも、どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定をしてほしい」などと訴えた。

 

2022年のTRPにはぼくも参加していたのですが、帰宅してSNSを見るとこのニュースが話題に上がっていて、かなり衝撃的だったのを覚えています。この件について、TRPスタッフがフェイスブックに投稿した文章も出回ったりして、TRPへの批判や疑義がかなり盛り上がっていました。

 

審査基準を設けてこなかったTRP

その後、TRP実行委員会は、ハフポスト日本版の報道を受けて声明を出しています。ちょっと長いですが、出展基準についての部分を引用します。

 

tokyorainbowpride.org

 

2、 出展基準に関して
当イベント出展者は近年一気に増加し、2012年に約20だった出展団体数は10年間で200を超えるまでになりました。出展基準については団体設立当初から変わらず、『当団体の活動目的、「LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め『“性”と“生”の多様性』を祝福する」という、TRPの趣旨にご賛同いただけること、その他当団体所定のルールを遵守していていただける企業・団体』としております。
初出展いただく企業に対しては、ヒアリング等を行い、場合によってはご出展いただく前に研修実施をおすすめするなどの対応を行なっておりますが、実際にどこまでLGBTQフレンドリーであるかを細分化したチェック項目等は現状設けてございません。
日本企業のLGBTQに対する取り組みはまだ始まったばかりといえる状況です。現時点では基準を設け出展のハードルを上げるよりも、(趣旨にご賛同いただいた上で)まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていただきたいという思いから基準は設けておりませんでした。

 

ざっくり要約すると、審査基準を設けてしまうと企業が萎縮してしまう可能性が高いので、基準を設けずにやってきました、ということでしょうか。「まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていきたいという思いから基準は設けておりませんでした」という一文は、何度読んでも怒りが湧いてきます。「LGBTQにふれ合い」って、なに??? 動物?????

 

全国のレインボープライドには、優先順位を見直してほしい

スポンサーの企業のご機嫌取りに終始し、ピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにする姿勢はもっと批判されるべきだし、こういう姿勢を見せ続けることで、例えば岸田・荒井の差別発言があってもTRP協賛企業はだんまり、という状況を作ることにも加担してしまってはいないでしょうか。

 

もちろんこれは東京レインボープライドだけの問題ではありません。各地で行われているレインボープライドにおいても、すべてをチェックしたわけではありませんが、協賛の審査基準を公開しているところは見つけられませんでした。

 

スポンサーからお金をもらって、イベントの規模を大きくすることも大事かもしれませんが、そのためにピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにしてしまっていては本末転倒です。優先順位を見直すべきです。

 

そのためにはやはり、「アクサ」のブース前で抗議活動をした孝則さんが言っていたように、「どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定」をする必要があって、審査基準を公開することも含めてこのことについて検討してほしいと思います。