にげにげ日記

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(元)不登校ゲイの思索

ディズニープラスで見られるLGBTQ関連作品10選【追記あり】

 

ディズニーの動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」に加入してからもうすぐ2年くらいが経ちます。当初はMCU(雑に言うと、いわゆるアメコミヒーローもの)のドラマを見るために加入したのですが、せっかくお金払ってるんだからいろいろ見てやろうと思って、あれこれ見てみました。意外と(?)LGBTQ関連作品も増えてきているので、それらの作品も見てみました。

 

disneyplus.disney.co.jp

 

まだまだ見るべき作品はあると思いますが、一旦ここらで、ぼくがこれまでに見たLGBTQ関連作品(LGBTQが主題となっているもの、あるいは、レズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのキャラクターが登場するものなど)の中からオススメのものをピックアップしてご紹介したいと思います。

 

(注:最大限配慮したつもりですが、どうしてもネタバレを含んでしまっている箇所が一部あります。ご容赦ください。)

 

 

1.殻を破る

ピクサー作品としては初の、ゲイカップルが主役の短編アニメーション。10分程度の短編作品ですが、カミングアウトの困難さがしっかり描かれています。しかし、せっかく素晴らしい作品を作ったのだから、ディズニーには「これはゲイカップルが主役の作品ですよ」とキャプションなどにしっかり明記し、プロモーションしてほしいものです。

 

殻を破るを視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

www.huffingtonpost.jp

 

2.リトル・プリン(セ)ス

こちらも10分程度の短編映画です。バレエとピンク色のものが好きなガブリエルと、マッチョな感じの父親のもとで育ったロブの友情のお話。ガブリエルのアイデンティティについて明確な言及はされていませんが、「普通とは何なのか」とジェンダー規範を問い直すような作品になっています。

 

リトル・プリン(セ)スを視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

3.ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル

2006年に放送されたミュージカル映画ハイスクール・ミュージカル」のリメイクドラマ。「ハイスクール・ミュージカル」が撮影された高校で、同作を題材にしたミュージカル作品を作ろう!というお話。2022年12月現在、シーズン3まで配信されており、シーズン4の製作も決定しています。

 

ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカルを視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

ブレイク前のオリヴィア・ロドリゴが主演している点や、楽曲の良さ、原作へのリスペクト、リプレゼンテーションなど、特筆すべき点はいくつもあるのですが、本記事で注目したいのはLGBTQのキャラクターやキャストについて。

 

原作となっている「ハイスクール・ミュージカル」では、ライアンというキャラクターがゲイであることを、同シリーズの監督ケニー・オルテガが発言しています。しかし、劇中ではそのような描写はありませんでした。

 

ケニーはライアンがゲイであることを、2006年から2008年まで続いたシリーズの中で明かさなかった理由について、「僕が懸念していたのは、ファミリーや子供たち向けだったということでね」と、『ハイスクール・ミュージカル』がファミリー向けの映画であったことをあげ、「ディズニーにはまだその一線を超える準備ができていないんじゃないか、まだその領域に進む準備ができていないんじゃないかって思ったんだ」と、2020年の現在ほどLGBTQ+の人々に世間がそれほど寛容ではなかった時代に作品内でカミングアウトを扱うことのハードルの高さを振り返った。

 

front-row.jp

 

その反省を踏まえてなのか、リメイク作品である「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」シリーズでは、シーズン1からゲイのキャラクターが主要キャラクターの1人として登場しています。さらに、ここからはネタバレになってしまいますが、シーズンが進むにつれて、クィアであることをカミングアウトするキャラクターやキャストが増えていきます。

 

それから、これまたネタバレになってしまいますが、ディズニー作品としては初めて、同性愛のキャラクターのためのラブソングが作られた点にもご注目ください。

 

youtu.be

 

front-row.jp

 

4.クラッシュ 真実の愛

レズビアンティーンネイジャーが主役のラブロマンス映画。海外ではhuluで配信されているみたいですが、日本ではDisney+でのみ配信されています(2022年12月現在)

 

クラッシュ 真実の愛を視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

アートが好きなレズビアンの主人公が、陸上部に所属するある女性に惹かれて、陸上部に入部するというお話。主人公だけでなく、複数のレズビアンバイセクシュアル女性が登場することがとても良いレズビアンバイセクシュアル女性の中にももちろん多様性があるので)。また、主人公の描くアート作品を含め、劇中のアートワークも素晴らしいです。

 

レズビアンバイセクシュアルの表象がまだまだ少ない中で、このような作品があることはとても意義深いと思うのですが、しかし、「殻を破る」と同様、キャプションにはこれがレズビアンが主役の作品であることは言及されておらず、またそのようなプロモーションもされていません。ディズニー、しっかりしてくれ!!!

 

5.バズ・ライトイヤー

大人気アニメーション「トイ・ストーリー」シリーズのキャラクター、バズ・ライトイヤーの単独作品です。個人的にバズは「トイ・ストーリー」シリーズの中でもお気に入りのキャラクターなので、彼が活躍する映画が制作されてとても嬉しいです。

 

バズ・ライトイヤーを視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

さて、スペースレンジャーであるバズの相方・ホーソーンは、同性のパートナー(女性)と結婚します。ホーソーンとそのパートナーとの間にはキスシーンがあるのですが、実はこれ、一度はお蔵入りになっていたそう。

 

このレズビアンカップルのラブシーンは、制作過程において一度カットされたものの、公開まで4カ月を切ったつい先日、本編に収録することが決定。

その裏には、昨今、関心を集めている米フロリダ州性的指向の議論を禁止する法案、通称「ゲイと言ってはいけない法案(Don't Say Gay bill)」の可決に対するディズニーの対応の不十分さにスタジオ内部からも反発の声が高まったことが影響しているという。

 

front-row.jp

 

また、ピクサーの従業員たちが連名で発表した声明には、「ピクサーのクリエイティブチームやエグゼクティブたちがどんなに反対しようとも、同性キャラクター同士が必要以上に親密そうにする描写は、これまでいつもディズニーの要請によりカットされてきました」とあり、大きな問題となっています。マジ何なん、ディズニー。今後も、ディズニーの姿勢は注視されるでしょう。

 

6.ファイアー・アイランド

ニューヨーク州ロングアイランドにある、実在する島「ファイアー・アイランド」は、ゲイに人気のリゾート地だそう。そんな島を舞台にしたこの青春ゲイラブコメ映画では、ゲイコミュニティ内の人種差別やモテ/非モテの問題などが多層的に描かれています。

 

ファイアー・アイランドを視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

日本で暮らす日本人のゲイであるぼくとしては、人種という点でのマイノリティ性を感じることはこれまでありませんでしたが、この作品を見て、欧米(のゲイコミュニティ)においてアジア系はマイノリティなのだということをこれでもかと突きつけられ、見ていてとても辛かったです。もちろん日本においては、人種的にはマジョリティになるわけなので、その点も考えていかなければならないわけですが。

 

youtu.be

 

7.ベイマックス

2014年に公開されて話題となったディズニー映画「ベイマックス」のドラマシリーズで、約10分のお話が全6エピソード。サラッと気楽に見れちゃいます。

 

ベイマックス!を視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

それぞれのエピソードで困ってるひとをベイマックスが助けるのですが、生理に悩む少女を助けるエピソードでは、生理用品売り場にトランスカラーの服を着た(おそらく)トランス男性がいたり、あるエピソードの主人公が同性愛者だったりします。

 

LGBTQに関連するトピックを扱うことを示唆しておきながら、実際にはまともに取り扱わずに、視聴者の耳目を集めることだけが目的のマーケティング手法を批判する言葉として「クィア・ベイティング」というものがありますが、一方で、「ベイマックス!」のように、日常風景の中にサラッと、でも明示的に、LGBTQのキャラクターを登場させるというのも意義深いなあと思わされました。

 

8.POSE/ポーズ

数々の賞を受賞した有名な作品です。以前はNetflixなどで配信されていましたが、2022年12月現在、無料で見放題なのはディズニープラスだけのようです。最終シーズンであるシーズン3まで配信されています。「glee*1」や「The PROM」などを手掛けたライアン・マーフィーなどが制作。

 

POSE/ポーズを視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

1980年代、エイズの感染が深刻化していた時代のニューヨークを舞台に、ファッションやパフォーマンスの腕を競う「ボール」というコンテストを主題にしたクィアたちによる群像劇で、有色人種のトランスジェンダー女性たちが物語の中核を担っていること、それらのトランスジェンダー女性たちを当事者が演じていることなどは注目すべきところです。

 

また、ショーン・フェイ著・高井ゆとり訳『トランスジェンダー問題』でも触れられている、トランスジェンダーと健康、セックスワーク、監獄などの問題にも触れられており、「トランスジェンダー問題」に言及したいひとはぜひこの作品を見てほしいです。

 

 

ほかにも特筆すべきところはたくさんあるのですが、エミー賞ドラマシリーズ部門の主演女優賞にノミネートされたMJ・ロドリゲスの存在感がすごいということだけ、ひとまず書いておきます。まだ見ていない方は、ぜひ見てください!

 

9.Love,サイモン 17歳の告白

こちらもわりと有名な作品かなと思います。ゲイであることをクローズドにしている高校生のサイモンが主人公の、カミングアウトや友情を描いた青春映画。ある日、高校の掲示板に、自分がゲイであることを書き込む人物(ブルーというハンドルネームを使っている)が現れて、サイモンはブルーが誰なのか探し始める……というお話。ドキドキする〜!

 

Love, サイモン 17歳の告白を視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

スピンオフ作品も作られており、その名も「Love,ヴィクター」。こちらはまだ未視聴なのですが、たくさんのクィアな人たちが登場するようで、近々観たいなと思っています。

 

10.エターナルズ

アベンジャーズで有名な「MCUマーベル・シネマティック・ユニバース)」の作品群の1つ。「ノマドランド」でアジア人として初めてゴールデングローブ賞監督賞を受賞したクロエ・ジャオが監督しています。

 

エターナルズを視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

MCU作品といえば、当初は白人で異性愛で男性のヒーローばかりが登場してきていましたが、シリーズが展開していくにつれて、次第に、女性のヒーローや非白人のヒーローが続々と登場・活躍するようになり、現実にある多様性を反映させていると言えます*2

 

このような展開に「ポリコレだ」と一面的な反応をするひとも少なくないですが、先ほど書いた通り、これは現実にある多様性を反映させただけなのです。多様なバックグラウンドを持った視聴者のことを考えれば、このような展開はマーケティングとして妥当であるばかりか、社会的にも望ましいものだとぼくは思います。

 

前置きが長くなってしまいましたが、「エターナルズ」では多様なヒーローが登場します。女性のヒーロー、聴覚に障害があるヒーロー、ゲイのヒーロー、アジア系のヒーロー、パキスタン系のヒーローなどなど。多様なバックグラウンドを持ったヒーローたちのやりとりと、クロエ・ジャオ監督が撮る美しい風景、そしてかっこいいアクションをぜひ堪能していただきたいです。

 

youtu.be

 

おわりに

かなり長くなってしまいましたが、以上、2022年12月時点で、ディズニープラスで見られるオススメのLGBTQ関連作品10選でした。

 

先月のニュースでは、ディズニープラスの会員数がNetflixのそれを上回ったと伝えられました。作品の多様性やラディカルさという点でいえば、Netflixと比べると、ディズニープラスで見られる作品はまだまだ遅れを取っていると言わざるを得ませんが、ディズニーのコンテンツ力にそれらが合わさったらと考えると、今後の展開が楽しみです。

 

gigazine.net

 

この記事でご紹介した作品の中からどれか気になったものがあれば、ぜひ見てみてほしいです。また、「ディズニープラスだったら、この作品も良いよ!」などオススメのLGBTQ関連作品があればコメントに書き込んでもらえると幸いです。よろしくお願いします。

 

 

追記:ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界

(更新:2022年12月28日)

この記事を公開した日(2022年12月24日)の前日にディズニープラスで配信開始された映画「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」に、同性に恋するティーンが描かれていたので、こちらもご紹介します。

 

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界を視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)

 

伝説の探検家である父を持つ農夫サーチャー・クレイドは、妻と息子と3人で暮らしています。あるとき、世界の危機を知らされ、親子3世代で奇妙な世界を冒険することになって——というあらすじです。この主人公の息子イーサンが、同性の友人に恋をしていて、ロマンスシーンも描かれています。

 

ゲイなのかバイセクシュアルなのか、具体的なワードは出てきませんし、同性愛に対する偏見や差別も描かれず(両親も周りの友人らも当然のように受け止めている)、カミングアウトの葛藤もないようです。どちらかというとイーサンのZ世代的な描写に重きが置かれています。このバランス感覚が見事だなと思いました。

 

物語としても、ネタバレになるので詳細は書けませんが、終盤、現代的な社会問題に通ずるテーマが前面に出てきて、とても興味深かったです。

 

www.youtube.com

 

追記:ディズニーのピンクウォッシュ

(更新:2024年4月14日)

この記事はあくまで「ディズニープラスで見られるLGBTQ関連作品」を紹介するものであり、「ディズニーはLGBTQ表象をしっかりやっている」「ディズニーはLGBTQフレンドリーで先進的な企業だ」などと主張したいわけではなかったのですが、世界的な情勢を見て、はっきりその点について言及すべきだと思ったので、追記します。

 

現在、イスラエルが行なっているパレスチナでの虐殺について、ディズニーはイスラエルに対してのみ200万ドルの寄付を行ったとして、批判されています。国際法に違反するイスラエルに対するボイコットなどの運動=BDS運動では、GoogleAmazonと並び、ディズニーに対して圧力をかけていくことが求められています。マイノリティの権利獲得や反差別、人権保障などの観点からLGBTQの表象に力を入れていくのであれば、パレスチナでの虐殺についても問題視しないと辻褄が合いません。

 

人権侵害や虐殺などをLGBTQフレンドリーのイメージで覆い隠す戦略のことを「ピンクウォッシュ」といいますが、ディズニーが企業として行なっていることもピンクウォッシュとして批判されて然るべきです。

 

www.huffingtonpost.jp

 

2024年4月現在、わたしはディズニープラスには加入しておらず、最近公開されたディズニー/ピクサー/マーベルなどの作品をチェックできていません。見たい気持ちは山々ですが、ディズニーのピンクウォッシュは看過できません。

*1:glee」もディズニープラスで見ることができます。LGBTQのキャラクターが多数登場する学園ミュージカル作品で、ぼくの青春です。

*2:MCU作品でLGBTQのキャラクターが明示的に描かれているものでいうと、ほかに「ホークアイ」や「ソー:ラブ&サンダー」などがあります。