にげにげ日記

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(元)不登校ゲイの思索

”わきまえた”カミングアウトはもうしたくない。カミングアウトは自由だ。

昔からカミングアウトというものが苦手だ。というのも、「重たいムードのなかで衝撃の告白」みたいな定番の(?)やり方が、ぼくにとってはどうにもしんどい。もっとカジュアルに言いたいし、カジュアルに受け止めてほしいと思っている。

 

”わきまえた”カミングアウトなんてしたくなかった

最初のうち(高校生の頃)は、「重たいムードのなかで衝撃の告白」的なカミングアウトをしていた。高校の人気のないところに友達を呼び出して、こっそり打ち明ける、みたいな。それ以外の方法が分からなかったし、分かっていてもそれをやる余裕はなかったと思う。

 

でも、だんだんやり慣れてくると、クライマーズ・ハイならぬカミングアウト・ハイのようになっていった。もっと知ってほしい、もっと分かってほしいという気持ちだった。

 

その気持ちが大きくなった結果として、カミングアウトTシャツを着て全校生徒の前に立つという行動に至った、と位置付けることもできると思う(それ以外の経緯や理由もたくさんあるんだけれど)。自由にカミングアウトをしたかった。”わきまえた”カミングアウトなんてしたくなかった。

 

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新しい先生たちにカミングアウト回り

全校生徒の前でカミングアウトをした翌年、新任の先生や異動してきた先生たちに対して、ひとりひとり挨拶回りならぬカミングアウト回りをした。ぼくを含め、LGBTQの生徒がいることをすべての先生に知っておいてほしかった。トム・ホランドスパイダーマンみたいな軽やかさが、当時のぼくにはあったように思う。

 

カミングアウト回りをする先生をリストアップして、いろんなやり方でひとりずつカミングアウトをしていった。LGBTQについて解説してあるリーフレットを見せて「ぼくはこのG=ゲイなんです」と言ってカミングアウトしたり、とある新聞の地方紙にインタビューしてもらった記事のコピーを見せて「これ、ぼくです」と言ってカミングアウトしたり、あとはここに書けないようなちょっとやり過ぎた方法でカミングアウトしたりもした。

 

たいていの先生は好意的なリアクションだったが、コンサバっぽい先生に「そんな方法じゃ理解は広まりませんよ」などとトーンポリシングめいた説教を喰らったことが1度だけあった。同じようなことを大学の先輩にも言われた。「あなたみたいに突然カミングアウトしていたら、相手をびっくりさせてしまうよ。もっと相手のことを考えて」と。

 

マイノリティの矜持

カミングアウトをさせられるのは、世の中が異性愛中心になっているからであって、ぼくらに責任があるわけではない。それなのに、どうしてカミングアウトのやり方についてアレコレ言われなきゃいけないのかさっぱり分からなかった。いまでも分からない。ぼくはぼくのタイミングで、やり方で、判断で、カミングアウトをしていいんだと思う。

 

それはもしかしたら相手をビックリさせたり、戸惑わせたり、場合によっては傷つけてしまうかもしれない。とある同級生は「何が地雷なのか分からない」と困惑の声を漏らしていた。そういう気持ちは、ある程度は想像できるので、多少は配慮したりちょっと説明してあげたりすることもあるけれど、基本的には知らんぷりしている。優しく説明してあげる責任を引き受ける必要はないと思っている。調べようと思えばいくらでも自分で調べられるでしょ。自分でどうにかして。

 

カミングアウトを自由に

カミングアウトをするかどうか、それを自由に選べるひとはまだまだ少数派だろう。「不利益を被りたくないから、カミングアウトはしない」「いましばらくは身を潜めて、時機が来るのを待つ」「カミングアウトをするかしないか、相手によって判断している」などというひとが多数派じゃないだろうか。

 

ぼくだって自由には選べない。常にリスクやメリット/デメリットを頭のどこかで計算している。だけど、その計算がめんどくさくなって「えいや!」とカミングアウトをしてきた。もっと慎重にやったほうがいいのかもしれないけれど、ぼくの性格ではこうなってしまう。その結果として、オープンリーゲイとして暮らしているが、オープンリーゲイのひとだって決して自由に選べてはいないはず。

 

今後、もっと自由にカミングアウトができるようになってほしいと思っている。選ぶに値するような選択肢として、まっとうなものになってほしい。そして、カミングアウトのやり方も自由であってほしい。少なくとも、”わきまえた”カミングアウトはもうしたくない。

 

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