にげにげ日記

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(元)不登校ゲイの思索

最近よく聴いているPodcast番組3つ

Spotifyのプレミアムプランに加入してみたところ、音楽よりもPodcastばかり聴いているPodcast自体は無料プランでも聴けるのに)。おもしろい番組をいくつか見つけることができて、作業中にずっと流し続けている。せっかくなので、最近よく聴いているPodcast番組をまとめておきたい。

 

 

荻上チキ・Session

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4〜5年前くらいに友人から紹介されてずっと聴いてきたTBSラジオの報道番組。以前は「荻上チキ・Session-22」というタイトルで、夜の時間帯にやっていたが、2020年9月末の放送時間枠の移動に伴い、タイトルが変わり、時間帯も夕方に変更。そしてPodcastでの配信も始まった。

 

社会や政治、文化などさまざまなテーマに関して、専門家を交えながら議論する内容になっていて、とてもタメになる。ジェンダーやSOGIに関するテーマも少なくなくて、最近だと、ライターの鈴木みのりさんが出演していた回が面白かった。

 

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通常、報道番組って、出演している専門家が男性ばかりに偏りがちだが、この番組では女性の専門家を積極的に起用しようとしている点も評価したい。それでも「記者会見で辞意を正式表明。歴代最長の安倍政権とはなんだったのか?」という特集の回では、その回に出演していた社会学者の富永京子が「(出演者の)ジェンダー・バランスがめちゃくちゃだ」とツイートしていて、それをMCの荻上チキが拾い、反省し、番組として今後改善していくという旨の発言をしていて、とても印象に残った。今後さらなる改善を期待したいし、そのように期待しても良さそうだと思える番組。

 

ここまで書いたように、番組の内容がおもしろい・タメになるのはさることながら、オープニングで行われるMCの荻上チキと南部宏美の掛け合いが絶妙で、おもしろくて好きだった。が、Podcastではオープニングが配信されていないので、そこだけどうにかしてほしい。

 

ジェーン・スー堀井美香の「OVER THE SUN」

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コミュニティから排除されがちな独身男性を救ってくれるのは「おばちゃん」だ、という旨のツイートが炎上している昨今だが、「おばさん」を主題に扱った番組がこの「OVER THE SUN」(このネーミングとサムネイル画像でグッと心を掴まれてしまった)

 

炎上したツイートのように、男性をケア(=おせっかい=無償の感情労働してくれる「潤滑油」としてモノ化されたり、物語のモブ役に配置されたりしてしまいがちな中年女性だが、中年女性にだって人権があり、悩みや葛藤があり、欲望もある。当然。そんな「おばさん」の「おばさん」による「おばさん」のための番組。

 

第1回と第2回のテーマは「離婚」。「この番組では何一つ有益なことはお話しできません」と注釈をつけつつも、視聴者のお便りを読み、寄り添っていく。寄り添ったかと思ったら、おでんの話や老化の話に逸れていく。その合間にパワーフレーズが飛び交う。「家族って「原価」ってこと」、「頑張るんじゃない、踏ん張るんだ」、「生産性の追求はやめよう。でも、負けへんで」。この独特な雰囲気や展開の仕方は、番組を聴いてもらわないとなかなか伝わらない気がする。

 

肩の力が抜けていて、楽しくおしゃべりできて、「弱さ」や「愚かさ」を抑圧して隠そうとするんじゃなくて共有する。(場合によっては)それを笑い合う。そんな風にぼくもなりたいなあと思う。炎上したツイートにも言えることだが、男性のケアを女性に押し付けるのは間違いで、男性同士でもケアしあえるように変えていけたらいい。

 

 

リモコンラジオ

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始条アキラ氏とかがせ氏のオタク2人によるオタクトークが聴ける番組。テーマは、ヒーロー、怪獣、アクション映画など。仮面ライダーMCUが好きなぼくは、毎回とても楽しんで聴かせてもらっている。「オタクってめんどくさいなあ」と(自嘲を込めて)笑える。自分もいろいろ語りたい、と思わせられる。

 

内容のおもしろさもさることながら、すごく良いなと思ったのが、第15回「絶対どこかで聴いた声の法則」で、番組としてのスタンス表明として、「人種、国籍、ジェンダーLGBTなどに関わる差別には明確に反対」と打ち出したところ。これがすばらしいと思ったので、一部文字起こししておきたい。

 

始条アキラ いままでの社会で育ってきたというところで、無意識レベルなところでの差別意識は、気づいていないだけで全然あるかもしれない。っていうところも念頭に置きつつ、ちゃんと考えていきたいというか。例えばBlack lives matterの問題でも、反差別、ポリティカル・コレクトネスっていろんな作品の中に取り入れられていますけれど、正しいことじゃないですか。正しさっていうのをベースにしたムーブメントって、正しさっていうのを後ろ盾にしてちょっと暴走したりとか、あるいは逆に、それに対する反発で、正しさそのものに反発したりすることってあるんですよね。っていう中で、ちゃんと学び続けて、考え続けていきたいなと。言い方や戦い方という違いはあるだろうし、そこはより良いやり方を追求していきたいけれど、ただまあ戦うってこと自体はやめない。

かがせ いってしまえば正義のヒーローものって、基本、そうやって進んでいくわけでしょ。その都度その都度で「正義」を考え直したりしつつも、「じゃあ悪を許すのか」っていったら「それは許さねえよ」っていうのが正義のヒーローもののコンテンツ。日米関係なく基本それだから。それをね、毎週毎週(引用者註:ヒーロー番組について)話して愛しているような我々が、現実のもの(引用者註:問題)に無関心でいるのかっていったら、それは無視できない。だから、戦っていくという姿勢もそうですし、作品を論じたり評したりっていうのも今後増えてくると思うけれど、そのなかのスタンスとして必ずあるよっていう。

始条アキラ そうですね。そういう切り口でもどんどん語っていきたいですし。気軽にというか、考えなしにホイホイ言うべきではないですけれど、だからといってタブー視・腫れ物にはしていけないと思いますし。良い意味でカジュアルに、オタク仲間同士カジュアルに語り合っていけるようにしたい。

 

これはあくまで主観なのだが、オタクをやっていて、ネット上で好きな作品についての情報収集をしていたり、SNSなどでほかのひとの感想を漁ったりしていると、必ずといっていいほど差別的な言動を目にしてしまう。もちろんオタクに限らず差別的な言動をするひとはいるのだが、オタク界隈ではそれが顕著に見られるような気がする(主観です)。ちょうど良い具体例を出せないけれど、ホモネタとかセクシズムなものをたくさん目にしてしまう。最近はそれにもだいぶ慣れてしまったが、それでもつい身構えてしまう。

 

だから、このようにスタンス表明をしてもらえると、安心して視聴できる。それがとてもありがたい。もちろん内容がおもしろいから聴こうと思うのだけれど、差別が容認されるような雰囲気があれば、身構えたまま聴かないといけないし、きっと聴き続けられないだろう。当然、「反差別といいつつも、ジェンダー問題についてはひどい認識だなあ」などということもままあるから、手放しで評価するのはリスクがあるけれど。

 

おわりに

以上に紹介したPodcast番組は、いずれもコンテンツとしておもしろい・タメになるのはもちろん、現状の社会に対する何らかの問題意識を持っていて、いま立っている場所からできることをやっていこうという姿勢が見られる点で共通していると言えるかもしれない。

 

コンテンツを作るにあたって、クリエイターは、ただポリコレを遵守することだけを考えるのではなく、ポリコレを遵守したうえでどうやったらおもしろい・タメになるものが作れるかを考えるだろう。「ポリコレは様々なコンテンツをつまらなくした」というひともいるが、すでにポリコレを遵守したおもしろい・タメになるコンテンツはどんどん作られている。

 

そのようなコンテンツを楽しんでいきたいし、また見つけたらぜひ紹介したい。

 

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