おさむです。
先日の記事でご紹介した、『LGBTヒストリーブック』を読み終えたので、感想を綴っておきます。
※訳本はまだ一般発売されていない(12月発売だそうです)ので、原著のほうを貼っておきます。
個人史と歴史的事件と
本書は、ストーンウォールの蜂起やエイズ・パニックなどの歴史的事件が紹介されると同時に、その時代を生きたひとびとの短い個人史が挿入されていきます。
だから、個人名が大量に出てくる。この時代のどこどこに住んでいた◯◯というひとは、こういう経験をして、この運動に携わるようになったとか、そういう話が合間合間に紹介されます。
歴史的事件が、ただ無機的に「起こった」のではなくて、ひとびとの生活や人生のなかで、有機的に「起こされていった」。そういう紹介のされ方がなされる本でした。
資料本としてすばらしいものであることはもちろん、「資料本」の枠を超えた、ひとびとの生活の実感が備わった「歴史」のうねりを知ることができる一冊だと思います。
この本が訳して出版されたことがとてもありがたいし、クラウドファンディングに参加できて嬉しい!
ちょっと読むのが大変だった
上述したことと関わるのですが、個人名があまりにたくさん出てくるため、「これって誰のことだっけ?」「この名前って、当事者? それとも弁護士?」と、記憶がごちゃごちゃになりがちでした。
でも、読み進めていくと、個人名をたくさん出す意義もよくわかってくるのです。
ぼくらが歴史上、常に、どこにでも存在してきたこと。そのことを隠され、「いないこと」にされてきてしまったこと(日本の教育では、歴史上の人物にLGBTQがたくさんいることをまったく扱いませんよね)。だからこそ、歴史の隠された部分を明るみに出して、歴史を語り直す必要があるのです。
本書でも紹介されている、エイズで亡くなったひとを追悼する「メモリアル・キルト」は、エイズで亡くなったひとの名前を書いた布をはりあわせて作ります。これは、政府がエイズ患者やLGBTQコミュニティを無視し続けてきたことを糾弾するためのアクションでもありました。
「いないこと」にされてきた歴史を語り直し、そこに個人名が大量に出てくるという意味で、本書自体が「メモリアル・キルト」だと言えるかもしれない、というのはちょっと無理があるでしょうか…。