あれから3年
相模原障害者施設殺傷事件が起きてから、3年が過ぎました。あの事件の報道を見たときぼくがどう感じ何を考えたのか、もう覚えていません。ただ、「この社会がヤバいことになっている」という感じがして、「専門家や有識者の分析を聞きたい」と思い、本やラジオ番組などを探していたことだけは覚えています。
だから、この本を読めてとてもよかった。ようやくちょっとだけこの問題にちゃんと向き合えたような気がしています。
- 作者: 雨宮処凛,神戸金史,熊谷晋一郎,岩永直子,杉田俊介,森川すいめい,向谷地生良
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2019/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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あれから3年。
この本の中でも触れられているように、この国ではこの間、「人工透析患者は殺せ」「LGBTには生産性がない」など、ひとの価値を生産性で測り、生産性のない(迷惑な)ひとは死んでも構わない、自己責任だといったような空気が蔓延してきたように思います。
これら一連の問題を並べて見てみることで、この社会がどうなってしまっているのか、分析してみせているのがこの本です。
対談を通して多角的に見えてくる、この社会
著者が、6人の専門家・有識者それぞれと対談するという構成なのですが、どれもすごく読み応えがあって面白かったです。
特に、事件のあとに熊谷晋一郎氏が「弱さでつながろう」と呼びかけたという話が、この社会の問題点をサックリ言い当てているように思いました。
明日、自分が集団のなかで、不要だと言われるのではないかという不安は、障害者だけのものではないでしょう。
当事者研究を通して、わかったことは、人は一人一人に弱さがある、弱さをシェアしてつながれるし、依存できるということです。
依存先が少なければ、少ないほど生きづらい。これは多くの人がそうではないですか?
事件があっても、なお、他者とつながり、生きていく社会を私は選びたいと思っています。
【相模原19人刺殺】それでも、他者とつながり生きる。脳性まひの医師の思い(https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/sagamihara-kumagaya)
この呼びかけは、本当の加害者は、「生産性の高さ」でひとの価値を測り、すべての人を「不要とされる不安」に陥れている思想なのであり、そこから抜け出そうというもの。(p.151)
敵を見誤ってはいけないわけです。
最後に――学校化社会、市場化社会
学校的な価値観(=学業成績によってひとの良し悪しが決められる)が広まり、それ以外の基準で評価されることがなくなった・少なくなった社会のことを「学校化社会」と言いますが、「生産性の高さ」だけで価値が測られる社会は「市場化社会」とでも言うべきでしょうか。
市場原理が幅を利かせ、人々は「市民」というより「消費者」として、地域コミュニティから孤立を深めていく。
「不要とされる不安」の蔓延は、そこにも要因がありそうです。