にげにげ日記

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(元)不登校ゲイの思索

Amazon Kindleのマンガをすべて出版停止します


2022年3月頃からAmazon Kindleの「インディーズマンガ」の枠でマンガを無料公開してきたのですが、ここ半年ほど、嫌がらせ、障害者差別的なレビューが継続的に書き込まれるようになっていました。その都度、Amazonに対応を求めてきました(違反報告、お問い合わせなど)が、これまで一度もリアクションがないまま。

 

Amazonは、コミュニティ ガイドライン*1を制定しているにも関わらず、それを適切に運用できていない状況が続いてしまっています。このような信頼できないプラットフォームでマンガを公開し続けたくない、という思いが募り、2024年1月いっぱいをもってAmazon Kindleのマンガをすべて出版停止することにしました。

 

これまでの経緯

各種SNSに投稿してきた四コママンガをまとめて読みやすいように、20本前後ずつ集めてKindle上で無料公開してきました。2024年1月現在、第8巻まで公開されており、通算で約3000回ダウンロードしていただきました。評価やレビューもいくつか頂いており、とても嬉しかったです。それらはスクショして保存しておこうと思っています。

 

 

一方で、2023年5月頃から、「何でもかんでも社会のせいにするな」「文句ばかり言うな」というような言いがかり、「猛暑で診察には行けないけれど、彼氏の家には行くんですね」「デモに行く前に自立しましょうね」などの障害者差別的なレビューが複数回にわたって書き込まれるようになりました。

 

Kindleマンガに書き込まれたレビューのスクショ

 

このようなレビューが書き込まれるのは普通にショックでしたし、「うつ病」「パニック障害」「ゲイ」「LGBTQ」などのキーワードからマンガを見つけてくださった方が、上記のような差別的なレビューを読むことになってしまうのも心苦しいです。せめて楽天市場のように、レビューに対する返信ができたらいいのにな、と思うのですが……。

 

これからについて

以上の理由から、Amazon Kindleでのマンガ公開は2024年1月いっぱいでやめます。出版停止にすると、新規での購入はできなくなるそうですが、すでに購入(ダウンロード)している分については引き続き読むことができるそうです。なので、もし読みたい方がいらっしゃったら早めに購入(ダウンロード)しておいてください。

 

また、今後も各種SNSでマンガの投稿は続けていきますし、どこか別のプラットフォームでまとめて読めるように公開したいなとも考えています。続報をお待ちください。

 

ちなみに、2024年1月現在、マンガを投稿しているSNSのアカウントは以下の通りです。

 

fedibird.com

 

bsky.app

 

www.instagram.com

 

お知らせ

最後にお知らせです。現代書館という出版社が出している『季刊 福祉労働』の最新号(175号)に、マンガを寄稿しております。就労移行支援の利用をはじめるまでの流れ、実際に利用して感じたこと、そして利用をやめるに至るまでの流れ、やめてから半年経ったいま思うこと……と、かなり詰め込みました。

 

gendaishokanshop.stores.jp

 

雑誌にマンガを掲載してもらえる機会なんてめったにないと思うので、よかったら読んでみてください。いまちょっと経済的に余裕がない……という方は図書館にリクエストして読んでほしいですし、余裕のある方は購入していただいたうえで、図書館にリクエストしてほしいです。図書館に収蔵されるって嬉しい!!!

ZINEの電子化についての雑多なメモ【追記あり】

文学フリマ(以下、文フリ)がこれだけ盛況なのに対して、文フリで出品されているようなZINE、同人誌、文芸誌などの電子化ってまだまだ進んでいないよなあと考えたりしている。小説『ハンチバック』で芥川賞を獲った市川沙央さんが問題提起したように、書籍全体として電子化が遅れているようなので、出版社にはもっと頑張ってほしいと思うのだが、その一方で、個人や小規模のサークルなどが制作しているZINE、同人誌、文芸誌なども電子化を進められたらいいなあと思う。

 

[……]『ハンチバック』を書くきっかけは、通っていた通信課程大学での卒論リサーチです。障害者や差別の歴史を調べていて、いらだちを感じることが多々ありました。

 とくに、日本の読書バリアフリー環境の遅れは目につきました。障害者の読書を想定せず、電子化されていないものが多い。重度障害者だってもちろん本を読むということに気づいてもらうために、いろんなものを書く重度障害者の主人公・釈華を設定し、自分を投影させました。

 

bunshun.jp

 

個人や小規模のサークルなどが制作しているZINEや同人誌、文芸誌などの電子化が進んでいない理由はいくつか挙げられそうだけれど、そのひとつとして、ハウツーが広く共有されていない点があるのではないかと思う。PDF形式がいいのか、EPUB形式がいいのか、それともMarkdown記述式がいいのか。それぞれどのソフトを使って作るのがいいのか。代替テキストはどのように書くのがいいのか。

 

テキスト主体のものだったらシンプルに考えて電子化できそうだけれど、ZINEは形式が自由なものも多く(そこも魅力のひとつですよね)、写真を切り貼りしたコラージュや、筆圧や筆致で感情を表現した手書きの作品などを視覚障害のあるひとに読んでもらうためにはどうすればいいだろうかと悩むひとも少なくないはず。視覚的に表現されたものをテキストに置き換える難しさや、それでも代替テキストを設定していくことの必要性についても考えていく必要がある。

 

この記事では、ZINEや同人誌、文芸誌など個人やサークルで制作された書籍の電子化について調べたり試したりしてみたことをメモとして残してみる。そのうちもっとしっかり整理した記事が出せたらいいのだけれど、たぶんそれなりの時間が必要になると思うので、これを読んだひとで余力のあるひとやこの分野について詳しいひとがいたら、ぜひぜひ取り組んでほしい。

 

以下、メモ。

 

 

Q.どんなデータを作ればいいの?

→PDFファイル、EPUBファイル、Markdown記法で書いたファイルなどが一般的みたい。さまざまなニーズがあることを考えると、それぞれの形式のデータをすべて準備できることが理想的だが、個人や小規模のサークルが制作することを想定すると、とりあえずできそうなところから着手していくのがよいと思う。

 

Q.アクセシブルなPDFとは?

→タグ付けによって、内容の読み上げ順序の指定や画像・数式に代替テキストが設定されているPDFファイル。タグ付けを行うには、AdobeIndesignAdobe AcrobatMicrosoftのWordなどのソフトを使うとよいみたい。固定レイアウトでデータを作れるので、デザインやレイアウトに凝った書籍はこちらのやり方でデータを作ることになりそう。

 

※参考:Indesignを使ったPDFのタグ付けの例
タグ付きPDFの作り方を検索 - design my style
https://ten-key2.com/design/creating_tagged_pdf/

 

※参考:Adobe Acrobatを使ったPDFのタグ付けの例
PDFのアクセシビリティ対応:入門編 | アクセシビリティBlog | ミツエーリンクス
https://www.mitsue.co.jp/knowledge/blog/a11y/201912/17_0000.html

 

メモ:上記のソフトいずれも持っていないので、タグ付きPDFを試しに作ってみることができなかった。使用感を知りたい。また、ZINEなどの自由な形式で作られた書籍をタグ付きPDFにする際、読み上げ順序の指定が難しい場合もあるのではないかと思うので、その点をどう考えればいいかしら。また、設定した代替テキストが長文になってしまうと、一部だけを読み上げたり途中から読み上げたりということができないようなので注意。場合によっては、どうにかしてテキストと画像だけを抽出してEPUBファイルを作成するほうがアクセシブルになるかも。

 

Q.アクセシブルなEPUBとは?

→タイトルや見出しの設定、目次の挿入、画像・数式に代替テキストの設定がなされているEPUBファイル。作り方はいろいろあって、Googleドキュメントで作るのが一番楽かも(OSに限定せず使えるし)。HTMLやCSSの知識が多少あれば、いちから作ることもできるみたい。PDFが固定レイアウトなのに対して、EPUBはリフロー版(利用者が使う端末のサイズや設定によって、文字の大きさやレイアウトを流動的に表示させられる)が作れるので、弱視色弱のひとはこっちのが使いやすそう。

 

※参考:いちからEPUB形式の電子書籍を作った例
・アクセシブルな電子書籍 (リフロー型 EPUB) の作りかた | Accessible & Usable
https://accessible-usable.net/2023/06/entry_230629.html


・自力でいちからEPUB形式の電子書籍を作ってみる! HTML/CSSの知識があれば十分!?|『人文×社会』の中の人
https://note.com/jinbunxshakai/n/nc273198954d6

 

メモ:「Googleドキュメントで作るのが一番楽かも」と書いたが、実際にGoogleドキュメントを使ってアクセシブルなEPUBを作る方法が書かれたサイトは見つからなかった。それでも調べながら自分でやってみたところ、意外と簡単にEPUBファイルを作成することができた。テキスト主体のZINEや同人誌、文芸誌はぜひまずEPUBで作ってほしい。PDFのほうにも書いたが、画像の代替テキストが長文になると使いづらくなるので、例えば画用紙に手書きで書いたものをスキャンした原稿(画像データ)などはできるだけテキストデータに置き換えていくのがアクセシブルじゃないかと思う。

 

Q.アクセシブルなMarkdown記法とは?

→まだちゃんと調べられていないが、文書構造を示すHTMLを簡略化したものらしいので、読み上げ順序は問題ないはず。画像に代替テキストを設定するのを忘れずに。テキスト主体のZINEや同人誌、文芸誌は向いてそうだが、デザインやレイアウトが凝っているものは向いてなさそう。

 

とりあえず、以上。

 

今後も情報収集・試行錯誤したい。ご意見やご指摘、情報提供などあればぜひコメントください。また、ZINEの電子化について気になる点や疑問などあればコメントに書いてもらえると、今後の情報収集・試行錯誤に活かしていきたいです。

 

追記:いただいたご意見について

この記事を公開してSNSでシェアしたところ、いろんなご意見をいただきましたので、それに対してぼくの考えを書いてみた。いくつかのご意見については、実際に電子書籍を利用する障害者に意見を求めたり、アクセシビリティについて書いてある書籍や記事をもっと読んだりして調査する必要がありそう。

 

ZINEの手作り感が好きなので、紙媒体がいい。

紙で印刷・発行するのをやめろ、とは言っていない。紙で印刷・発行しつつ電子データでも販売したり、紙で購入したひとのみアクセスできるテキストデータや音声データを作成したりと、やり方はいろいろあるはず(どのようなかたちでの電子化、販売/頒布が障害者にとってアクセスしやすいのか、という点については要調査

 

小部数で発行して、小規模に販売/頒布するからこそできる表現があるんだけれど。

どんなひとでも読めるかたちで公開しろ、とは言っていない。紙で購入したひとのみアクセスできるテキストデータや音声データを作成して、URLやQRコードをZINEの奥付のあたりに記載する、というやり方でアクセシビリティの確保に取り組んでいるひとは既にいる。

 

地方に住んでいるひとや貧しいひとのアクセシビリティについても考えるべきで、そうするとブログやnoteで無料公開するのがいいのではないか。

それも大事な話だけれど、さまざまな論点をひとまとめにして拙速に議論を進めるのはよくない。ここでは障害者がアクセスできるZINEの電子データの作り方について話している。

 

そもそも電子書籍は売れないよ。

売れる/売れないの話はしていない。そもそも利益が出るほどたくさん売れる見込みがあるのならば、出版社を通して出版することを検討したい。利益やニーズの多寡は一旦脇に置いて、自分の好きなもの・大事だと思うことを書いて発行するのがZINEの特徴じゃないだろうか。とはいえ、時間や労力をかけて調べて電子化したのに売れないとなると、徒労感が溜まって「もうやめた!」となってしまうかもしれないので、そういう意味でもハウツーを参照しやすいかたちでまとめられているといいなと思う。また、アクセシブルな電子書籍がもっと普及すれば、そこにアクセスしようと思う障害者も増えるのではないかとも思う要調査

 

自分が作ったZINEなんて電子化するほどの価値はない。

価値があるかどうかは読み手が決めるものなので、どんなZINEでもぜひ電子化してほしい。

精神障害者の人生がハードモードすぎた。国はちゃんと保障して。


精神障害になると、なにかとお金がかかって大変です。しかも、精神障害者は十分な収入を得るのが難しい状況に置かれており、それなのに国は精神障害者に対してまともな保障をしていない、というひどい状況を書き記しておこうと思って、このブログを書いています。

 

いずれ加筆修正してZINEにするかもしれません。てか、本音を言うと、誰かちゃんとしたひとがこの問題について本を書いておくれ、と思っています(すでにそういう本があったらごめんなさい。良かったらコメントで本のタイトルを教えてください)

 

本題に入る前に、今回は「精神障害者」という言葉を使って状況整理を試みてみますが、当然、うつ病統合失調症では状況が異なってくる部分もあるでしょうし、ぼくの体験や知見がすべてではない精神障害者全体を代表しない)ことは断っておきます。あくまで、ぼく自身の体験や、ぼくの周りにいるひとから聞いた話をもとに書いていきます。

 

 

精神障害になるとお金がかかるよ

通院して投薬治療を行っていれば、診察代と薬代がかかります。ぼくは月に1回の通院で、自立支援医療制度を使って(医療費が1割負担になる)、診察代と薬代を足して2,000円ほど払っています。1年だったら24,000円。通院の頻度が多ければもっと多く払っているひともいるでしょう。

 

それだけじゃありません。精神障害が重くなると、日常生活にも支障を来たします。お風呂に入れないとか、歯磨きをする気力がないとか、自炊する体力がないとか。虫歯になれば治療費がかかります。自炊ができなければ、外食をするかデリバリーを利用することになり、食費がかさみます。

 

また、処方された薬によっては、体重が増えることがあります。ぼくも20kgほど太りました。その理由としては、代謝が落ちるとか、食欲が増進されるとか言われていますが、素人なのでよく分かりません。太ると、服を買い替えなければなりません。ここでもお金がかかってきます。

 

精神障害を抱えながら働くのは大変だよ

それでも定収入を得ていれば何とかなるだろうと思われるでしょうが、精神障害を抱えながら働くのはとても大変です。体調の変化を完ぺきにコントロールすることはかなり難しいです(無理じゃね?)。勤怠が安定しないとフルタイムで働くのは厳しいでしょう。

 

それじゃあ障害者雇用で働けばいいというひともいるかもしれませんが、身体障害者と比べると、精神障害者は採用されづらかったり、平均賃金が低かったりする状況があります。

 

また、障害者雇用で働くために「就労移行支援」という福祉サービスを利用すると、事業所は国から助成金をもらうために利用者を長く在籍させようとして、半年から1年ほどの訓練期間を設定されることがあります。ほとんどの場合、利用料金はかかりませんが、交通費や食費などはかかりますので、訓練期間が長引けば長引くほど経済的な負担も大きくなってしまいます。

 

このような状況があるので、精神障害者は、クローズで(病気や障害を職場に公表せずに)就労していることが少なくありません。勤怠を安定させるために、思うようにコントロールできない体調を何とかコントロールできているように振る舞いながら賃金労働をする大変さは筆舌に尽くしがたいと思います。

 

精神障害者への保障はほとんどないよ

こんなに厳しい状況に置かれていれば、何らかの保障があって然るべきだと思うのですが、ぼくが知る限りでは、大した保障はありません。先述した自立支援医療制度は経済的な負担が減ってありがたいですが、冷静に考えてみると、医療費をゼロにしてくれてもいいんじゃないかと思います。

 

障害年金を受給するという手もありますが、手続きが煩雑で大変すぎる上に、受給の条件が厳しかったり、受給額が低かったりします。障害年金をもらいながら、障害者雇用やアルバイト・パートで働いて、ギリギリ暮らしているひともいます。

 

もっと抜本的に精神障害者の暮らしを支えるような保障が必要です。いまの状況では、実家やパートナーに養ってもらうか、生活保護を利用するか、といった選択肢しかないというひとも少なくないでしょう。実家やパートナーは永遠に存在するものではないし、生活保護もルールが厳しかったり受給額が低かったり受給者に対する蔑視やバッシングがひどかったりして、健康で文化的な最低限度の生活を送るには心許ないと思います。

 

おわりに

とりあえずざっくりまとめてみました。書き忘れたことがあればあとから追記していこうと思います。

 

これを骨子にして、データや文献、いろんな当事者のエピソードを掲載して、ZINEや本にすることができたらいいなあ。広く社会に問題提起したいです。どうすればいいかしら。なんかアイデアやアドバイスなどあったらコメントください。

東京レインボープライドはスポンサーが大好き——レインボープライドと協賛のあり方について

表題についてTwitterにいくつか投稿したのですが、あとで見返すにはブログのほうが何かと便利だし、そもそもTwitterがいつ無くなるか分からないので、こちらにまとめておくことにしました。

 

 

スポンサーをまともに審査してこなかった?

今年の東京レインボープライド(以下、TRP)では、特別協賛プランのうち、レインボー、ダイヤモンド、プラチナの企業には審査が入るらしいです。

 

tokyorainbowpride.com

 

TRP2023の「ご協賛のご案内」に掲載されている、特別協賛プランの付帯特典一覧ページ。左下に「レインボー、ダイヤモンド、プラチナのご協賛には審査が入ります。」と注釈がある。

 

去年まではこの注釈はなかったので、おそらく去年のTRPで起きた事件を受けて追加されたものなのかなと推測しています。どんな審査が行われるのか問い合わせてみましたが、一般公開はしていないそうです。

 

推測ですが、審査基準が低いと「こんな基準で大丈夫?」と批判されるだろうし、逆に審査基準が高いとスポンサー様が寄り付かなくなっちゃうだろうと考えると、一般公開はせずに、企業に応じて柔軟に対応するのが賢い、ということではないでしょうか。一参加者としては、公開してもらったほうが安心して参加できるんですけれど。

 

ちなみに、「ゴールド、シルバー、ブロンズの企業には審査はしないのか」と問い合わせてみたところ、TRPの趣旨に賛同してもらえるかどうかのすり合わせはしている、ということで、要するに審査はしていないそうです。お金さえ払えば協賛企業になれてしまうという状況は、ちょっと怖い……。

 

平和的な抗議活動をしていたゲイ男性が通報される事件

先述した「去年のTRPで起きた事件」とは、2022年のTRPの会場で「アクサ」のブース前で平和的な抗議活動を行ったゲイ男性が、TRPスタッフによって警察に通報されてしまったという恐ろしい事件のことです。

 

www.huffingtonpost.jp

 

日本最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)2022』(4月22〜24日、代々木公園)の2日目となった23日、ゲイの孝則さん=仮名=が保険会社などを運営する『アクサグループ』と『TRP実行委員会』に対し、抗議活動を行う一幕があった。

孝則さんは『アクサ損害保険』で自動車保険を更新する際、同性パートナーを配偶者として認められなかったといい、同社が出展する企業ブースの前でプラカードを持って「LGBTQフレンドリーを謳い、TRPの大きなスポンサーとなっている企業が、セクシュアリティによる差別をしていることに、大きなショックを受けました」「TRP実行委員会にも、どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定をしてほしい」などと訴えた。

 

2022年のTRPにはぼくも参加していたのですが、帰宅してSNSを見るとこのニュースが話題に上がっていて、かなり衝撃的だったのを覚えています。この件について、TRPスタッフがフェイスブックに投稿した文章も出回ったりして、TRPへの批判や疑義がかなり盛り上がっていました。

 

審査基準を設けてこなかったTRP

その後、TRP実行委員会は、ハフポスト日本版の報道を受けて声明を出しています。ちょっと長いですが、出展基準についての部分を引用します。

 

tokyorainbowpride.org

 

2、 出展基準に関して
当イベント出展者は近年一気に増加し、2012年に約20だった出展団体数は10年間で200を超えるまでになりました。出展基準については団体設立当初から変わらず、『当団体の活動目的、「LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め『“性”と“生”の多様性』を祝福する」という、TRPの趣旨にご賛同いただけること、その他当団体所定のルールを遵守していていただける企業・団体』としております。
初出展いただく企業に対しては、ヒアリング等を行い、場合によってはご出展いただく前に研修実施をおすすめするなどの対応を行なっておりますが、実際にどこまでLGBTQフレンドリーであるかを細分化したチェック項目等は現状設けてございません。
日本企業のLGBTQに対する取り組みはまだ始まったばかりといえる状況です。現時点では基準を設け出展のハードルを上げるよりも、(趣旨にご賛同いただいた上で)まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていただきたいという思いから基準は設けておりませんでした。

 

ざっくり要約すると、審査基準を設けてしまうと企業が萎縮してしまう可能性が高いので、基準を設けずにやってきました、ということでしょうか。「まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていきたいという思いから基準は設けておりませんでした」という一文は、何度読んでも怒りが湧いてきます。「LGBTQにふれ合い」って、なに??? 動物?????

 

全国のレインボープライドには、優先順位を見直してほしい

スポンサーの企業のご機嫌取りに終始し、ピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにする姿勢はもっと批判されるべきだし、こういう姿勢を見せ続けることで、例えば岸田・荒井の差別発言があってもTRP協賛企業はだんまり、という状況を作ることにも加担してしまってはいないでしょうか。

 

もちろんこれは東京レインボープライドだけの問題ではありません。各地で行われているレインボープライドにおいても、すべてをチェックしたわけではありませんが、協賛の審査基準を公開しているところは見つけられませんでした。

 

スポンサーからお金をもらって、イベントの規模を大きくすることも大事かもしれませんが、そのためにピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにしてしまっていては本末転倒です。優先順位を見直すべきです。

 

そのためにはやはり、「アクサ」のブース前で抗議活動をした孝則さんが言っていたように、「どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定」をする必要があって、審査基準を公開することも含めてこのことについて検討してほしいと思います。

『LGBTヒストリーブック日本運動史編(仮)』への疑問と懸念【備忘録的メモ】

 

先日、クラウドファンディング「書籍『LGBTヒストリーブック日本運動史編(仮)』を制作発行したい!」が目標金額を達成していました。書籍の概要や制作発行の背景については、下記リンクをご参照ください。

 

greenfunding.jp

 

このクラファンが開始された頃から、TwitterなどのSNS上で疑問や懸念を表明したり、友人たちと話題にしたりしていたのですが、特にそれらの疑問や懸念が解消されることがないまま終了したなあ、という印象です。この記事では、ひとまずぼくが抱いている疑問点・懸念点をいくつか挙げて、備忘録的にまとめておきたいと思います。

 

今後、書籍を制作していく過程で、それらの疑問・懸念が解消される可能性はもちろんあるでしょう。そのときは、「あら、杞憂だったね」と笑ってやってください。というか、「お前みたいな若造の考えてることなんてとっくに議論し尽しているんだよ、バーカ」みたいな感じで制作が進み、完成してくれたらいいなあ……。

 

さて、いろいろな疑問・懸念があるかと思いますが、とりあえず以下に3点ほど挙げてみたいと思います。

 

 

疑問・懸念①どうして編著者がシスゲイ2人なのか?

クラファン開始時に、最初に思ったことです。お二人(山縣真矢さんと後藤純一さん)ともLGBTQの社会運動に長く携われている方だというのは分かりますし、お二人のこれまでのご経験やお考えなどについて知りたい気持ちはありますが、それにしても『LGBTヒストリーブック』の編著者がシスジェンダーのゲイ2人というのは、偏りすぎじゃないでしょうか*1

 

編著者という特権的なポジションにいる方のSOGIEや社会的な立場性が偏っていると、内容も偏ってしまうのではないかという懸念があります。実際、編著者のお一人である後藤さんもそのような懸念・疑問が頭によぎったようで、以下のように書かれています。

 

山縣さんからお声がけいただいた際、私なんかよりもレズビアントランスジェンダーの方のほうがよいのでは…という逡巡もあったのですが、25年間ライターとして生きてこられた自分がこのようなかたちでLGBTQコミュニティに貢献し、恩返しできるのであれば本望だとの思いから、お引き受けすることにしました。

 

greenfunding.jp

 

その後、クラファン終了の直前になって、山賀沙耶さんという、セクシュアルマイノリティ女性向けに活動している「パフスクール」のスタッフで、フリーランスで編集ライターもされている方が制作に関わられることが発表されました。

 

この書籍の企画については、クラウドファンディングが立ち上がる前に、山縣さんから「協力してほしい」という旨をちらっとお聞きしていました。
その詳細をクラウドファンディングのページで拝見したときにまず思ったのは、「“LGBT”のヒストリーブックを作るのに、ゲイ男性2人が編著者で大丈夫なのだろうか?」ということです。

 

greenfunding.jp

 

うん……。やっぱりそこ、気になりますよね。初歩の初歩的な疑問ですよね。山賀さんのメッセージを読むと、LGBTQコミュニティ内の男性中心主義への批判的な視座を持たれていることや、制作メンバーには山賀さん以外にもセクシュアルマイノリティ女性がいるらしいということが分かります。

 

ひとまずこの疑問・懸念は解消されたように思えますが、山賀さんは「制作に協力する」というお立場のようですし、「編著者というポジションに立つのはシスゲイ2人」という点は変わらないのかな、と思うと、やはりこの疑問・懸念がキレイに解消されたとは思えません。

 

疑問・懸念②歴史記述の「偏り」をどこまで無くせるのか?

で、このクラファンに対して疑問や懸念をいだいたぼくは、以下のようなツイートをしました*2

 

 

これらのツイートをしたところ、明治大学法学部教授・北海道大学名誉教授である鈴木賢さんからこのようなリプライがとんできました(一応、スクショ撮っておきました)

 

 

鈴木賢さんとはフォロワーでもフォロイーでもありませんし、面識すらありません。なので、急なタメ口(上から目線?)のリプライにちょっと動揺しました。で、URLを踏んで、鈴木賢さんの書かれた応援メッセージを拝読しました。

 

greenfunding.jp

 

雑に要約してしまうと、「日本のLGBTQの社会変革運動の歴史」への社会的関心が高まってきていること、歴史記述の難しさは多々あれど、歴史解釈は広く開かれているのであって、このクラファンはその最初の一歩であるのだということなどが書いてあります。

 

大まかには理解しますが、しかし、疑問は残ります。まず、歴史解釈は広く開かれていると書かれてありますが、それを書籍というかたちで制作・発行することは、現状、すべてのひとができることではないはずです。男性である/シスジェンダーである/都市に住んでいる/健康である……などの特権を持つひとに比べて、男性以外のジェンダーである/シスジェンダー以外のアイデンティティを持っている/地方に住んでいる/障害や病気があるひとは、比較的それがしづらいという不均衡な社会的状況があるのではないでしょうか。

 

とりわけLGBTQの社会運動においては、山賀さんが書いておられることとも関連しますが、ゲイ男性が中心を占拠してしまっているという批判がなされてきています。そんななか、編著者が都市に住むシスゲイ2人だけ……となると、先述したようなことを筆頭に、さまざな不均衡な社会的状況をスルーした歴史記述になってしまうのではないかという懸念があります。

 

歴史を編むということは大事な仕事だと思います。だからこそ、「最初の一歩だから編著者の偏りは大目に見てあげて」というのではなくて、最初の一歩だからこそ、できるだけ偏りが出ないように、編著者のSOGIEや社会的な立場性を重視する必要があったのではないでしょうか。

 

疑問・懸念③パートナーシップ・婚姻制度の話がどう扱われるのか?

以前にもブログに書いたことがありますが、少なくとも2010年代後半から、LGBTQの社会運動のアジェンダが、同性婚の成立や同性パートナーシップ制度の策定ばかりが取り上げられる傾向にあるように思っています。

 

nigenige110.hatenablog.jp

 

同性婚ができない差別的な現状を放置してよいとはまったく思いませんが、LGBTQの社会運動のアジェンダはもっと多様で、さまざまな当事者のニーズがあります。日本各地で行われている多種多様な運動をつぶさに見ていくと、そのことははっきり分かるはずです。

 

ところで、編著者のお一人である山縣さんは、このクラファンに「過去から未来へ 歴史の流れは、婚姻の平等の実現へ」というタイトルの文章を寄せておられます。

 

本家の『LGBTヒストリーブック』を読めば、多少の揺り戻しはあったとしても、歴史の大きな流れは婚姻の平等へと向かっていると確信が持てることでしょう。そして、日本もその例外ではなく、遅かれ早かれ、同性婚が実現される日が必ず来ることでしょう。そう思えるのは、日本においても、LGBTQの人権運動が着実にその歩みを前へ進めている実感があるからです。

 

greenfunding.jp

 

山縣さんは、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の、東京二次訴訟の原告のお一人でもあるそうで、同性婚ができない現状に対する問題意識があることが窺えます。その問題意識は共有しますが、一方で、先述したように、同性婚の成立ばかりがアジェンダとして取り上げられる傾向があるように思えることもあって、危惧もしています。

 

「いろんな運動があったけれど、婚姻の平等の実現はもうすぐだ! 頑張ろう!」みたいに雑に総括して、アジテーションする感じで締められたりしないか、ちょっぴり心配しています。

 

LGBTヒストリーブック日本運動史編(仮)』では、LGBTQの社会運動の多様なアジェンダや取り組み、さまざまな当事者のニーズが取り上げられることを願っています。すべてを漏らさず記述することは無理でしょうけれど、だからといって、どんな内容・構成・バランスになっても構わない、というわけでもないのではないでしょうか。

 

docs.google.com

 

書籍で取り上げてほしいエピソードや人物について投稿できるご意見フォームが設置されていますが、意見や批判を待つだけではなく、積極的に多様な立場のひとの意見や批判を聞きながら制作が進んでいってほしいなあと思います。

 

おわりに

軽く備忘録的にメモする程度に留めておこうと思って書き始めたのですが、4,000字を超えてしまいました。長々とすみません。ここまで読んでいただいた方には感謝します。より多くのひとと問題意識を共有できたら嬉しいなと思います。他にも疑問点や懸念点がある方がいらっしゃいましたら、コメントに書いてもらえるとありがたいです。

 

LGBTヒストリーブック日本運動史編(仮)』の制作は今後も続くでしょうし、クラファンのページで進捗報告もなされるようです。書籍が完成し、発行されたらぜひ読ませていただきたい、そしたらまた感想など書きたいと思っています。

 

最後に、重ねてになりますが、このブログに書いた疑問や懸念が、すべて杞憂に終わるといいなと思っています。

*1:似たようなタイトルの書籍として、永易至文さんの『「LGBT」ヒストリー』(2022年、緑風出版)がありますが、単著ですし、クラファンでお金を集めて発行された書籍でもありませんから、そこまで違和感はありませんでした。

*2:ぼくのツイートがきっかけかどうかは分かりませんが、このあと、クラファンのページに以下のような注釈が記載されました。「クラウドファンディングが成立した暁には、本書は、メインの編著である山縣真矢・後藤純一だけでなく、LGBTQコミュニティの様々なSOGIの方々と協働しながら制作していく予定です」。