にげにげ日記

にげにげ日記

(元)不登校ゲイの思索

精神障害者は障害者割引の対象外?!——精神障害者と自由に移動する権利

電車のつり革


さまざまな問題が山積みの日本社会ですが、とりあえず自分にとって身近な問題や、そのとき話題になっている問題については、できる限り情報収集したり実際に確認して情報をまとめたり意見表明したりしたいと思いながらぼちぼち過ごしています。

 

2024年2月下旬、わたしがよく見ているSNSで話題に挙がっていたもののひとつが、鉄道の障害者割引についてでした。この問題について、劇作家の相馬杜宇さんという方が、change.orgにてオンライン署名を集めておられます。

 

www.change.org

 

皆さんは、障がい者が鉄道を使って移動する際、「介護者が同伴」または「単独の場合は101キロ以上の移動」でないと、障がい者割引が適用されないというルールがあることをご存知でしょうか。
このルールはJRや小田急電鉄など、多くの鉄道会社が決めているものです。しかしこのルール、実は旧国鉄時代に定められたとても古いもので、バリアフリー化が進んで障がい者が1人でも移動できる今の時代にはそぐわない制限になっています。
しかも、鉄道会社自体もなぜ101キロというとても長い乗車区間での線引きなのか、なぜこのルールが残っているのか、わからないまま前例を踏襲しているという報道も出ています。

(署名ページより引用)

 

国土交通大臣や各鉄道会社に宛てた署名で、以下のことを要望として挙げられています。

 

障がい者が鉄道を単独利用する場合、乗車距離が101キロ以上などの一定の距離を超えないと割引が適用されない仕組みを見直して欲しい。
・なぜこの「101キロ以上」などのルールが存在するか説明を求める。
精神障害者、難病の方など、他の障害者への割引がない理由の説明を求める。
バリアフリー時代に合わせた制度への変更を要求する。

 

相馬杜宇さんが、身体障害者として体験したことや疑問に思ったことを署名ページに詳しく書いておられるので、わたしは精神障害者の立場で体験したことや疑問に思ったことを補足的にまとめておこうかなと思い、この記事を書いています。

 

精神障害者は割引対象外?

まず、先ほど引用した文章の冒頭部分をもう一度引用します。

 

皆さんは、障がい者が鉄道を使って移動する際、「介護者が同伴」または「単独の場合は101キロ以上の移動」でないと、障がい者割引が適用されないというルールがあることをご存知でしょうか。

 

ここでいう「障がい者」は、身体障害者知的障害者のみを指しており、JRや小田急電鉄など多くの鉄道会社で、精神障害者が利用できる障害者割引はありません。いわゆる普通料金で乗車することになります。どうして精神障害者だけが割引対象外になっているのかという疑問については、署名ページを読む限りでは、国鉄時代のルールが約70年経ったいまでもそのまま適用されているから……という形式的な回答しか得られていないみたいです。

 

www.jreast.co.jp

 

不平等と混乱を生んでいる現状

精神障害者が利用できる鉄道の障害者割引としては、署名ページでも取り上げられているように、都営地下鉄西日本鉄道名古屋市などの取り組みが挙げられます。わたしは東京都に住んでいるので都営地下鉄を利用することがあります。障害者手帳を窓口に持って行き、「精神障害者都営交通乗車証」というものを発行してもらいます。2年ごとに更新の手続きをするために指定の駅の窓口まで出向かなければいけなかったり、モバイルPASMOスマホを改札にかざして乗車料金を払えるアプリ)に対応していなかったりと不満に思う点や改善点はありますが、それでもありがたい制度だなと思っています。

 

一方で、住んでいる地域や利用する路線(鉄道会社)によって障害者割引を利用できたりできなかったりするために、不平等を生んでいるとも言えます。また、JR東日本区間ではモバイルPASMOモバイルSuicaで乗車料金を支払って、都営地下鉄に乗り換える際は先述の「精神障害者都営交通乗車証」をカバンから取り出して改札にかざして……というように手数が増え、混乱してしまうときがあります。よく注意しておかないと、都営地下鉄の改札でスマホをかざしてしまい、普通料金を支払ってしまうのです。

 

www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp

 

責任のなすりつけ合い

このような不平等や混乱を避けるためにもルールを統一してほしいところですが、国土交通省としては、各種割引については各鉄道会社の判断に委ねるという姿勢のよう。その一方で、では鉄道会社の側はどう考えているのかというと、TBSが行った取材によれば、JR東日本の担当者が以下のように答えています。

 

身体障害者割引をはじめとする公共割引は、国の社会福祉政策で行われるべきものと考えております。国鉄の制度を継承したものは、引継ぎ継続して実施いたしておりますが、割引の拡大については、ひいては他のお客さまのご負担増にもつながるため、現在のところ考えておりません」

 

newsdig.tbs.co.jp

 

約70年前の国鉄時代のルールがそのまま継承されていること、ルールを変えて割引の適用範囲を拡大すると「他のお客さまのご負担増にもつながる」=乗車料金が上がるために、現状を維持したいという考えが確認できます。いわば、国と企業で責任をなすりつけ合っているような状況です。

 

精神障害者と移動する権利

そもそも精神障害者は、その障害があるためにフルタイム就労が難しかったり、勤怠が安定しないからという理由で障害者雇用でも採用されづらかったり、障害者雇用で採用されたとしても低賃金だったり、時給200円ほどの工賃で軽作業をするしか選択肢がなかったり……という経済状況があります。障害年金を受給しているひともいますが、一人暮らしをするのに十分な金額はなかなかもらえません。また、通院や投薬治療のために定期的な出費がかさんだり、体調が安定しないために自炊ができず、コンビニのお弁当やデリバリーで食事をすることになり食費が膨らんだりもします。

 

nigenige110.hatenablog.jp

 

このような状況を鑑みると、古いルールを見直し、精神障害者にも障害者割引を適用するのが望ましいとわたしは考えますが、国土交通省も鉄道会社も健常者の顔色をうかがってルールを変更できないでいます。これは移動権(交通権)をめぐる問題として広く共有されるべきではないでしょうか。

 

 移動権(交通権)とは、人が自由に移動する権利のこと。日本国憲法の第22条の「居住・移転および職業選択の自由」、第25条の「生存権」、第13条の「幸福追求権」などと関連した人権を集合した権利として定義されることがある。公共交通の利用をめぐって関連訴訟が起こされてきた経緯もあり、交通権と呼ばれることも多い。

 

project.nikkeibp.co.jp

 

地方の鉄道やバスの減便や廃止が問題になっている昨今ですが、これを移動する権利の侵害として捉えると、鉄道の障害者割引のあり方もまた議論の対象になるべきだと考えられます。通院するにも、通勤するにも、就職活動をするにも、友達や家族に会うにも、公共交通機関を利用して移動をしなければいけない場合は多々あります。移動する権利がしっかり保障されるためにも、鉄道の障害者割引についての見直しは早急になされなくてはならないと思います。

 

おわりに

かなり長くなってしまいましたが、以上が精神障害者のひとりとしての補足です。最後にオンライン署名のURLをもう一度貼っておきます。問題意識を持たれた方は、ぜひ署名をしたりコメントを書いたりSNSで拡散したり友達とこのことについて話したりいろいろしてみてほしいです。

 

www.change.org

Amazon Kindleのマンガをすべて出版停止します


2022年3月頃からAmazon Kindleの「インディーズマンガ」の枠でマンガを無料公開してきたのですが、ここ半年ほど、嫌がらせ、障害者差別的なレビューが継続的に書き込まれるようになっていました。その都度、Amazonに対応を求めてきました(違反報告、お問い合わせなど)が、これまで一度もリアクションがないまま。

 

Amazonは、コミュニティ ガイドライン*1を制定しているにも関わらず、それを適切に運用できていない状況が続いてしまっています。このような信頼できないプラットフォームでマンガを公開し続けたくない、という思いが募り、2024年1月いっぱいをもってAmazon Kindleのマンガをすべて出版停止することにしました。

 

これまでの経緯

各種SNSに投稿してきた四コママンガをまとめて読みやすいように、20本前後ずつ集めてKindle上で無料公開してきました。2024年1月現在、第8巻まで公開されており、通算で約3000回ダウンロードしていただきました。評価やレビューもいくつか頂いており、とても嬉しかったです。それらはスクショして保存しておこうと思っています。

 

 

一方で、2023年5月頃から、「何でもかんでも社会のせいにするな」「文句ばかり言うな」というような言いがかり、「猛暑で診察には行けないけれど、彼氏の家には行くんですね」「デモに行く前に自立しましょうね」などの障害者差別的なレビューが複数回にわたって書き込まれるようになりました。

 

Kindleマンガに書き込まれたレビューのスクショ

 

このようなレビューが書き込まれるのは普通にショックでしたし、「うつ病」「パニック障害」「ゲイ」「LGBTQ」などのキーワードからマンガを見つけてくださった方が、上記のような差別的なレビューを読むことになってしまうのも心苦しいです。せめて楽天市場のように、レビューに対する返信ができたらいいのにな、と思うのですが……。

 

これからについて

以上の理由から、Amazon Kindleでのマンガ公開は2024年1月いっぱいでやめます。出版停止にすると、新規での購入はできなくなるそうですが、すでに購入(ダウンロード)している分については引き続き読むことができるそうです。なので、もし読みたい方がいらっしゃったら早めに購入(ダウンロード)しておいてください。

 

また、今後も各種SNSでマンガの投稿は続けていきますし、どこか別のプラットフォームでまとめて読めるように公開したいなとも考えています。続報をお待ちください。

 

ちなみに、2024年1月現在、マンガを投稿しているSNSのアカウントは以下の通りです。

 

fedibird.com

 

bsky.app

 

www.instagram.com

 

お知らせ

最後にお知らせです。現代書館という出版社が出している『季刊 福祉労働』の最新号(175号)に、マンガを寄稿しております。就労移行支援の利用をはじめるまでの流れ、実際に利用して感じたこと、そして利用をやめるに至るまでの流れ、やめてから半年経ったいま思うこと……と、かなり詰め込みました。

 

gendaishokanshop.stores.jp

 

雑誌にマンガを掲載してもらえる機会なんてめったにないと思うので、よかったら読んでみてください。いまちょっと経済的に余裕がない……という方は図書館にリクエストして読んでほしいですし、余裕のある方は購入していただいたうえで、図書館にリクエストしてほしいです。図書館に収蔵されるって嬉しい!!!

ZINEの電子化についての雑多なメモ【追記あり】

雑誌の束の側面

 

文学フリマ(以下、文フリ)がこれだけ盛況なのに対して、文フリで出品されているようなZINE、同人誌、文芸誌などの電子化ってまだまだ進んでいないよなあと考えたりしている。小説『ハンチバック』で芥川賞を獲った市川沙央さんが問題提起したように、書籍全体として電子化が遅れているようなので、出版社にはもっと頑張ってほしいと思うのだが、その一方で、個人や小規模のサークルなどが制作しているZINE、同人誌、文芸誌なども電子化を進められたらいいなあと思う。

 

[……]『ハンチバック』を書くきっかけは、通っていた通信課程大学での卒論リサーチです。障害者や差別の歴史を調べていて、いらだちを感じることが多々ありました。

 とくに、日本の読書バリアフリー環境の遅れは目につきました。障害者の読書を想定せず、電子化されていないものが多い。重度障害者だってもちろん本を読むということに気づいてもらうために、いろんなものを書く重度障害者の主人公・釈華を設定し、自分を投影させました。

 

bunshun.jp

 

個人や小規模のサークルなどが制作しているZINEや同人誌、文芸誌などの電子化が進んでいない理由はいくつか挙げられそうだけれど、そのひとつとして、ハウツーが広く共有されていない点があるのではないかと思う。PDF形式がいいのか、EPUB形式がいいのか、それともMarkdown記述式がいいのか。それぞれどのソフトを使って作るのがいいのか。代替テキストはどのように書くのがいいのか。

 

テキスト主体のものだったらシンプルに考えて電子化できそうだけれど、ZINEは形式が自由なものも多く(そこも魅力のひとつですよね)、写真を切り貼りしたコラージュや、筆圧や筆致で感情を表現した手書きの作品などを視覚障害のあるひとに読んでもらうためにはどうすればいいだろうかと悩むひとも少なくないはず。視覚的に表現されたものをテキストに置き換える難しさや、それでも代替テキストを設定していくことの必要性についても考えていく必要がある。

 

この記事では、ZINEや同人誌、文芸誌など個人やサークルで制作された書籍の電子化について調べたり試したりしてみたことをメモとして残してみる。そのうちもっとしっかり整理した記事が出せたらいいのだけれど、たぶんそれなりの時間が必要になると思うので、これを読んだひとで余力のあるひとやこの分野について詳しいひとがいたら、ぜひぜひ取り組んでほしい。

 

以下、メモ。

 

 

Q.どんなデータを作ればいいの?

→PDFファイル、EPUBファイル、Markdown記法で書いたファイルなどが一般的みたい。さまざまなニーズがあることを考えると、それぞれの形式のデータをすべて準備できることが理想的だが、個人や小規模のサークルが制作することを想定すると、とりあえずできそうなところから着手していくのがよいと思う。

 

Q.アクセシブルなPDFとは?

→タグ付けによって、内容の読み上げ順序の指定や画像・数式に代替テキストが設定されているPDFファイル。タグ付けを行うには、AdobeIndesignAdobe AcrobatMicrosoftのWordなどのソフトを使うとよいみたい。固定レイアウトでデータを作れるので、デザインやレイアウトに凝った書籍はこちらのやり方でデータを作ることになりそう。

 

※参考:Indesignを使ったPDFのタグ付けの例
タグ付きPDFの作り方を検索 - design my style
https://ten-key2.com/design/creating_tagged_pdf/

 

※参考:Adobe Acrobatを使ったPDFのタグ付けの例
PDFのアクセシビリティ対応:入門編 | アクセシビリティBlog | ミツエーリンクス
https://www.mitsue.co.jp/knowledge/blog/a11y/201912/17_0000.html

 

メモ:上記のソフトいずれも持っていないので、タグ付きPDFを試しに作ってみることができなかった。使用感を知りたい。また、ZINEなどの自由な形式で作られた書籍をタグ付きPDFにする際、読み上げ順序の指定が難しい場合もあるのではないかと思うので、その点をどう考えればいいかしら。また、設定した代替テキストが長文になってしまうと、一部だけを読み上げたり途中から読み上げたりということができないようなので注意。場合によっては、どうにかしてテキストと画像だけを抽出してEPUBファイルを作成するほうがアクセシブルになるかも。

 

Q.アクセシブルなEPUBとは?

→タイトルや見出しの設定、目次の挿入、画像・数式に代替テキストの設定がなされているEPUBファイル。作り方はいろいろあって、Googleドキュメントで作るのが一番楽かも(OSに限定せず使えるし)。HTMLやCSSの知識が多少あれば、いちから作ることもできるみたい。PDFが固定レイアウトなのに対して、EPUBはリフロー版(利用者が使う端末のサイズや設定によって、文字の大きさやレイアウトを流動的に表示させられる)が作れるので、弱視色弱のひとはこっちのが使いやすそう。

 

※参考:いちからEPUB形式の電子書籍を作った例
・アクセシブルな電子書籍 (リフロー型 EPUB) の作りかた | Accessible & Usable
https://accessible-usable.net/2023/06/entry_230629.html


・自力でいちからEPUB形式の電子書籍を作ってみる! HTML/CSSの知識があれば十分!?|『人文×社会』の中の人
https://note.com/jinbunxshakai/n/nc273198954d6

 

メモ:「Googleドキュメントで作るのが一番楽かも」と書いたが、実際にGoogleドキュメントを使ってアクセシブルなEPUBを作る方法が書かれたサイトは見つからなかった。それでも調べながら自分でやってみたところ、意外と簡単にEPUBファイルを作成することができた。テキスト主体のZINEや同人誌、文芸誌はぜひまずEPUBで作ってほしい。PDFのほうにも書いたが、画像の代替テキストが長文になると使いづらくなるので、例えば画用紙に手書きで書いたものをスキャンした原稿(画像データ)などはできるだけテキストデータに置き換えていくのがアクセシブルじゃないかと思う。

 

Q.アクセシブルなMarkdown記法とは?

→まだちゃんと調べられていないが、文書構造を示すHTMLを簡略化したものらしいので、読み上げ順序は問題ないはず。画像に代替テキストを設定するのを忘れずに。テキスト主体のZINEや同人誌、文芸誌は向いてそうだが、デザインやレイアウトが凝っているものは向いてなさそう。

 

とりあえず、以上。

 

今後も情報収集・試行錯誤したい。ご意見やご指摘、情報提供などあればぜひコメントください。また、ZINEの電子化について気になる点や疑問などあればコメントに書いてもらえると、今後の情報収集・試行錯誤に活かしていきたいです。

 

追記:いただいたご意見について

この記事を公開してSNSでシェアしたところ、いろんなご意見をいただきましたので、それに対してぼくの考えを書いてみた。いくつかのご意見については、実際に電子書籍を利用する障害者に意見を求めたり、アクセシビリティについて書いてある書籍や記事をもっと読んだりして調査する必要がありそう。

 

ZINEの手作り感が好きなので、紙媒体がいい。

紙で印刷・発行するのをやめろ、とは言っていない。紙で印刷・発行しつつ電子データでも販売したり、紙で購入したひとのみアクセスできるテキストデータや音声データを作成したりと、やり方はいろいろあるはず(どのようなかたちでの電子化、販売/頒布が障害者にとってアクセスしやすいのか、という点については要調査

 

小部数で発行して、小規模に販売/頒布するからこそできる表現があるんだけれど。

どんなひとでも読めるかたちで公開しろ、とは言っていない。紙で購入したひとのみアクセスできるテキストデータや音声データを作成して、URLやQRコードをZINEの奥付のあたりに記載する、というやり方でアクセシビリティの確保に取り組んでいるひとは既にいる。

 

地方に住んでいるひとや貧しいひとのアクセシビリティについても考えるべきで、そうするとブログやnoteで無料公開するのがいいのではないか。

それも大事な話だけれど、さまざまな論点をひとまとめにして拙速に議論を進めるのはよくない。ここでは障害者がアクセスできるZINEの電子データの作り方について話している。

 

そもそも電子書籍は売れないよ。

売れる/売れないの話はしていない。そもそも利益が出るほどたくさん売れる見込みがあるのならば、出版社を通して出版することを検討したい。利益やニーズの多寡は一旦脇に置いて、自分の好きなもの・大事だと思うことを書いて発行するのがZINEの特徴じゃないだろうか。とはいえ、時間や労力をかけて調べて電子化したのに売れないとなると、徒労感が溜まって「もうやめた!」となってしまうかもしれないので、そういう意味でもハウツーを参照しやすいかたちでまとめられているといいなと思う。また、アクセシブルな電子書籍がもっと普及すれば、そこにアクセスしようと思う障害者も増えるのではないかとも思う要調査

 

自分が作ったZINEなんて電子化するほどの価値はない。

価値があるかどうかは読み手が決めるものなので、どんなZINEでもぜひ電子化してほしい。

精神障害者の人生がハードモードすぎた。国はちゃんと保障して。


精神障害になると、なにかとお金がかかって大変です。しかも、精神障害者は十分な収入を得るのが難しい状況に置かれており、それなのに国は精神障害者に対してまともな保障をしていない、というひどい状況を書き記しておこうと思って、このブログを書いています。

 

いずれ加筆修正してZINEにするかもしれません。てか、本音を言うと、誰かちゃんとしたひとがこの問題について本を書いておくれ、と思っています(すでにそういう本があったらごめんなさい。良かったらコメントで本のタイトルを教えてください)

 

本題に入る前に、今回は「精神障害者」という言葉を使って状況整理を試みてみますが、当然、うつ病統合失調症では状況が異なってくる部分もあるでしょうし、ぼくの体験や知見がすべてではない精神障害者全体を代表しない)ことは断っておきます。あくまで、ぼく自身の体験や、ぼくの周りにいるひとから聞いた話をもとに書いていきます。

 

 

精神障害になるとお金がかかるよ

通院して投薬治療を行っていれば、診察代と薬代がかかります。ぼくは月に1回の通院で、自立支援医療制度を使って(医療費が1割負担になる)、診察代と薬代を足して2,000円ほど払っています。1年だったら24,000円。通院の頻度が多ければもっと多く払っているひともいるでしょう。

 

それだけじゃありません。精神障害が重くなると、日常生活にも支障を来たします。お風呂に入れないとか、歯磨きをする気力がないとか、自炊する体力がないとか。虫歯になれば治療費がかかります。自炊ができなければ、外食をするかデリバリーを利用することになり、食費がかさみます。

 

また、処方された薬によっては、体重が増えることがあります。ぼくも20kgほど太りました。その理由としては、代謝が落ちるとか、食欲が増進されるとか言われていますが、素人なのでよく分かりません。太ると、服を買い替えなければなりません。ここでもお金がかかってきます。

 

精神障害を抱えながら働くのは大変だよ

それでも定収入を得ていれば何とかなるだろうと思われるでしょうが、精神障害を抱えながら働くのはとても大変です。体調の変化を完ぺきにコントロールすることはかなり難しいです(無理じゃね?)。勤怠が安定しないとフルタイムで働くのは厳しいでしょう。

 

それじゃあ障害者雇用で働けばいいというひともいるかもしれませんが、身体障害者と比べると、精神障害者は採用されづらかったり、平均賃金が低かったりする状況があります。

 

また、障害者雇用で働くために「就労移行支援」という福祉サービスを利用すると、事業所は国から助成金をもらうために利用者を長く在籍させようとして、半年から1年ほどの訓練期間を設定されることがあります。ほとんどの場合、利用料金はかかりませんが、交通費や食費などはかかりますので、訓練期間が長引けば長引くほど経済的な負担も大きくなってしまいます。

 

このような状況があるので、精神障害者は、クローズで(病気や障害を職場に公表せずに)就労していることが少なくありません。勤怠を安定させるために、思うようにコントロールできない体調を何とかコントロールできているように振る舞いながら賃金労働をする大変さは筆舌に尽くしがたいと思います。

 

精神障害者への保障はほとんどないよ

こんなに厳しい状況に置かれていれば、何らかの保障があって然るべきだと思うのですが、ぼくが知る限りでは、大した保障はありません。先述した自立支援医療制度は経済的な負担が減ってありがたいですが、冷静に考えてみると、医療費をゼロにしてくれてもいいんじゃないかと思います。

 

障害年金を受給するという手もありますが、手続きが煩雑で大変すぎる上に、受給の条件が厳しかったり、受給額が低かったりします。障害年金をもらいながら、障害者雇用やアルバイト・パートで働いて、ギリギリ暮らしているひともいます。

 

もっと抜本的に精神障害者の暮らしを支えるような保障が必要です。いまの状況では、実家やパートナーに養ってもらうか、生活保護を利用するか、といった選択肢しかないというひとも少なくないでしょう。実家やパートナーは永遠に存在するものではないし、生活保護もルールが厳しかったり受給額が低かったり受給者に対する蔑視やバッシングがひどかったりして、健康で文化的な最低限度の生活を送るには心許ないと思います。

 

おわりに

とりあえずざっくりまとめてみました。書き忘れたことがあればあとから追記していこうと思います。

 

これを骨子にして、データや文献、いろんな当事者のエピソードを掲載して、ZINEや本にすることができたらいいなあ。広く社会に問題提起したいです。どうすればいいかしら。なんかアイデアやアドバイスなどあったらコメントください。

東京レインボープライドはスポンサーが大好き——レインボープライドと協賛のあり方について

表題についてTwitterにいくつか投稿したのですが、あとで見返すにはブログのほうが何かと便利だし、そもそもTwitterがいつ無くなるか分からないので、こちらにまとめておくことにしました。

 

 

スポンサーをまともに審査してこなかった?

今年の東京レインボープライド(以下、TRP)では、特別協賛プランのうち、レインボー、ダイヤモンド、プラチナの企業には審査が入るらしいです。

 

tokyorainbowpride.com

 

TRP2023の「ご協賛のご案内」に掲載されている、特別協賛プランの付帯特典一覧ページ。左下に「レインボー、ダイヤモンド、プラチナのご協賛には審査が入ります。」と注釈がある。

 

去年まではこの注釈はなかったので、おそらく去年のTRPで起きた事件を受けて追加されたものなのかなと推測しています。どんな審査が行われるのか問い合わせてみましたが、一般公開はしていないそうです。

 

推測ですが、審査基準が低いと「こんな基準で大丈夫?」と批判されるだろうし、逆に審査基準が高いとスポンサー様が寄り付かなくなっちゃうだろうと考えると、一般公開はせずに、企業に応じて柔軟に対応するのが賢い、ということではないでしょうか。一参加者としては、公開してもらったほうが安心して参加できるんですけれど。

 

ちなみに、「ゴールド、シルバー、ブロンズの企業には審査はしないのか」と問い合わせてみたところ、TRPの趣旨に賛同してもらえるかどうかのすり合わせはしている、ということで、要するに審査はしていないそうです。お金さえ払えば協賛企業になれてしまうという状況は、ちょっと怖い……。

 

平和的な抗議活動をしていたゲイ男性が通報される事件

先述した「去年のTRPで起きた事件」とは、2022年のTRPの会場で「アクサ」のブース前で平和的な抗議活動を行ったゲイ男性が、TRPスタッフによって警察に通報されてしまったという恐ろしい事件のことです。

 

www.huffingtonpost.jp

 

日本最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)2022』(4月22〜24日、代々木公園)の2日目となった23日、ゲイの孝則さん=仮名=が保険会社などを運営する『アクサグループ』と『TRP実行委員会』に対し、抗議活動を行う一幕があった。

孝則さんは『アクサ損害保険』で自動車保険を更新する際、同性パートナーを配偶者として認められなかったといい、同社が出展する企業ブースの前でプラカードを持って「LGBTQフレンドリーを謳い、TRPの大きなスポンサーとなっている企業が、セクシュアリティによる差別をしていることに、大きなショックを受けました」「TRP実行委員会にも、どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定をしてほしい」などと訴えた。

 

2022年のTRPにはぼくも参加していたのですが、帰宅してSNSを見るとこのニュースが話題に上がっていて、かなり衝撃的だったのを覚えています。この件について、TRPスタッフがフェイスブックに投稿した文章も出回ったりして、TRPへの批判や疑義がかなり盛り上がっていました。

 

審査基準を設けてこなかったTRP

その後、TRP実行委員会は、ハフポスト日本版の報道を受けて声明を出しています。ちょっと長いですが、出展基準についての部分を引用します。

 

tokyorainbowpride.org

 

2、 出展基準に関して
当イベント出展者は近年一気に増加し、2012年に約20だった出展団体数は10年間で200を超えるまでになりました。出展基準については団体設立当初から変わらず、『当団体の活動目的、「LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め『“性”と“生”の多様性』を祝福する」という、TRPの趣旨にご賛同いただけること、その他当団体所定のルールを遵守していていただける企業・団体』としております。
初出展いただく企業に対しては、ヒアリング等を行い、場合によってはご出展いただく前に研修実施をおすすめするなどの対応を行なっておりますが、実際にどこまでLGBTQフレンドリーであるかを細分化したチェック項目等は現状設けてございません。
日本企業のLGBTQに対する取り組みはまだ始まったばかりといえる状況です。現時点では基準を設け出展のハードルを上げるよりも、(趣旨にご賛同いただいた上で)まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていただきたいという思いから基準は設けておりませんでした。

 

ざっくり要約すると、審査基準を設けてしまうと企業が萎縮してしまう可能性が高いので、基準を設けずにやってきました、ということでしょうか。「まずはTRPに参加することで、社員の方がLGBTQにふれ合い、意識を高め、社内での取り組み促進につなげていきたいという思いから基準は設けておりませんでした」という一文は、何度読んでも怒りが湧いてきます。「LGBTQにふれ合い」って、なに??? 動物?????

 

全国のレインボープライドには、優先順位を見直してほしい

スポンサーの企業のご機嫌取りに終始し、ピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにする姿勢はもっと批判されるべきだし、こういう姿勢を見せ続けることで、例えば岸田・荒井の差別発言があってもTRP協賛企業はだんまり、という状況を作ることにも加担してしまってはいないでしょうか。

 

もちろんこれは東京レインボープライドだけの問題ではありません。各地で行われているレインボープライドにおいても、すべてをチェックしたわけではありませんが、協賛の審査基準を公開しているところは見つけられませんでした。

 

スポンサーからお金をもらって、イベントの規模を大きくすることも大事かもしれませんが、そのためにピンクウォッシュに加担し、LGBTQ当事者やアドボカシーを蔑ろにしてしまっていては本末転倒です。優先順位を見直すべきです。

 

そのためにはやはり、「アクサ」のブース前で抗議活動をした孝則さんが言っていたように、「どれだけ当事者に対する取り組みを進めているかなど、LGBTQコミュニティへの貢献度をしっかり見て、スポンサー企業の選定」をする必要があって、審査基準を公開することも含めてこのことについて検討してほしいと思います。